1990年、小笠原の海で消えた若い恋人たち――20年後、漂着したノートが語る“あの日”。

1990年の正月、小笠原の港町に夜が 落ちる直前佐藤行二さはそれだけを残して 扉を閉めた。登板が短くきしみロ元の肌が 揺らぐ足音は階段を1段ずつ離れていき、 やがて波の白道に溶けた部屋に取り残され た恋人田中剣二はあの何気ない一言が別れ の言葉として生涯に刻まれることをこの 瞬間まだ知らない窓を開けると港の匂いは 塩に鉄を混ぜて運んでくる昼間の賑わいが うせたブ筒には観光線の白い腹が眠り売店 のシャッターには旬の島寿司の張り紙が はめいていた。手すり越しに覗く水面は 黒い鏡。不に遠くで赤い光が揺れた懐中 電灯か合図か。ただ剣二の胸はその小さな 赤を気兆差しとして替えてしまう。彼は 階段を駆けもり、宿の主人に声をかける 恋人が戻ってこないんです。灰皿の橋で火 を天使直した主人は肩を救めて視線を そらした。散歩だろう。星が綺麗だ。若い ものは夜に歩く。答えは波のように丸く。 何も押し返さない。ケ二は玄関を飛び出し 、海へ降りる西場へ。そこは解食で削られ た崖の合間を縫い、塩が満れば1本の安け になる浜の特定に出ると小舟がいつくぐっ た息をして板プル側に打ち寄せる波が規則 正しく、まるで鼓動に似ている板の上に ポツンと黒い縁が転がっていた。 拾い上げると雪のカメラのレンズキャップ 。彼は名を呼んだ2度3°帰るのは遠い症 で砕ける音ばかり。その夜の海は気少記録 に仮と書かれるし付けさだった風速ゼロ 3m毎秒は少なく指定良行紙の上では安全 で現場では逆に油断を生むコンディション だ。音が途切れ、距離感が麻痺する暗黒の 水平面はどこまでが足場でどこからが鹿を 曖昧にしのない島影は獣の背のように 膨らんでは沈む。夜ハ健二は交板に 駆け込み若い巡査に状況をまくし立てた 26歳の鈴木は眠気の取れぬ股また股を 擦すりながらも1つ1つ問いを重ねる。 最後に会話した時間所持品危険故障手帳の 紙が擦すれる音が彼の緊張を代弁していた 。だが、捜作は夜明けを待つという規定の 壁に跳ね返える。夜間の海面捜作は不加線 の出動は朝会場保安と警察の権限協会、 そして観光地の事故を増やしたくないと いう見えない網が彼の背中に絡みつく東の 空がわずかに白み海取りが一声だけた波 所感のように住んだ朝会場保安の小さな準 が1時間だけ定の外収を撫で何も見つけ られないまま引き返す報告書には形式的な 言葉が並ぶ転落の可能性医療品なし天候 良行ただ1つ鈴木の視線だけが地面から 離れ、港の片隅に膝を置いた。そこには 古びた網にまみれたロープ倉庫の錆色の扉 。誰もが見て誰もが見なかったものたち。 観光の最盛期だ。長引かせるな。署長に 呼ばれた部屋で鈴木は短い指示を受ける。 海の事故は決められた言葉で閉じる方が町 にとって都合がいい。彼は頷いた反論の 言葉は喉まで来てそこで止まる。島の経済 は翌年の予約状況に左右される宿の部屋 稼働レンタバイク釣り舟誰もが誰かの客で あり誰もが誰かの取引先だこの島は互いの 沈黙で立っている書類は早く流れ現実は 遅く沈む空の骨箱を抱えた雪の両親は港で 膝を追った健二は東京へ戻るが大学を やめる海流調査のノートは拍死になり部屋 の壁には2人で取った1枚だけが残った カメラのストラップのこののように彼の肩 に沈黙が食い込む。もしあの時ロの音を 追っていたらもし特定で見た赤い光の出所 を掴んでいたらもし宿の主人の目尻りの中 に言葉より先に疑いを見つけていたら人は もしを積み上げて塔を作りその上で眠れ なくなる剣事にとってその塔は20年分の 高さになっていく。一方鈴木は自質で報告 書に署名したボールペンの先が髪をかめる たびあの夜に聞いた低い声が剃る静かに しろ壁に耳ありだ。宿の2階の漏れる窓の 元を通りすぎた自分の靴音。あの時1歩 だけ中に踏み込む勇気があればそう結んだ 指は震えていた。1990年の小笠原は エ所の色で塗られているコバルトの海 照り返す白い路地十字が虹向くう。そして その裏面にだけ黒いインクで書かれた言葉 がある。観光は島の地は島の影。血を守る には影を見ない。その論理は若い巡査の胸 を鈍くさし、恋人を失った青年の叫びを歯 の元に沈めた薄い雲がよ柔らげる午後宿の 前を通りかかった鈴木は2階の窓から 笑い声が漏れるのを聞いた。ひしのものだ とすぐ分かった。足は止まった。だが手は 扉に向かわなかった。彼はそのまま 歩き去り。報告書は翌日には決済員を受け 事件は事故遺体未発見のまま処理。 ファイルの施表紙には黒マジックで完結に 産業。夏は過ぎた。台風の予報がテレビに 品し橋の旗が角度を変える。観光客の 笑い声は薄まり、入れ替わるように地元の 時間が戻る。だが一度沈んだ影は地元の 時間でも浮いてはこない。漂着物の棚に 今日も見知らぬサンダルが加わる発骨は 上がらない海は与え海は奪い時には何も 返さない。それでも海は覚えているは20 年前と同じ周期で上がり、同じ引き方でも 尖る岩の隙間に落とされた小さな異物。 ビニールの防水パック密閉されたフィルム 室。誰かの意図が残した未来への手紙は塩 の決晶を身にまといながら未だ暗いポスト の中で待っていた20年後。その手紙が 開封される時最初に飛び出してくるのは 笑顔の2人である。だから人は油断する。 だが、今はまだ1990年。声を潜める宿 を数える若い巡査。の切れた三橋でレンズ キャップを握る青年物語は静かな傷を持っ たまま一旦閉じる。そしてここからは視聴 者に1つの問を渡したい。見なかったこと にする勇気と見届ける勇気。あなたなら どちらを選ぶだろう。自称2010年海は 口を開き骨とカメラを差し出す。20年 ぶりに写真が言葉よりも有便になる瞬間へ 。1990年8月15日、Eマイナの観光 線が父島に入行した日、港の沢めきの中で 1組の若いカップルが他の観光客よりも 少しだけゆっくりと降りてきた25歳の 大学院生中健二そして恋人の差藤雪23歳 彼女は美術大学で写真を先行し、首からは 愛用のフィルムカメラが元がっていた白い ワンピースの裾が塩風を受けて舞い彼女の 笑ミは夏そのもののように明るかった。 ここで1枚取ろうよ。雪が港の手すりに 寄りかかり、カメラを高く掲げて自撮りを したシャッター音が将棋気味響く、海の 向こうには乳動雲がそびえ、背後の山から は攻めの声が降っていた彼らの旅は偶然の ようでいて必然のようでもあった。ケ二は 大学の研究で海流の調査を雪は卒業政策の ための写真をそれぞれ別の目的で島を訪れ ていたが互いの予定を重ね合わせ共同の 最後の夏を過ごすことにしたのだった。 ケ二の論文先生も期待してたよ。雪が手を 握ると彼は少し照れながらも笑った。お前 の写真もきっと展示で1番になるさ。その 短い会話の裏には学生としての未来とどこ か大人になりきれない不安とが混じってい た。東京から遠く離れたこの島で2人は 初めて世界の外側を感じていた。港では 民宿の客引たちが声を張り上げていた。 そんな中、50代半ばほどの男が彼らに 近づく日焼けした顔に背を刻み、笑ミを 浮かべたその男が糸哲糸鉄だった。学生 さんたち宿はもう決まったかい?うちは 静かで海もすぐそこだよ。ケ二が断ろうと した瞬間、雪が口を開いた。おじさん かメソってまだやってますか?男のエミが わずかに固まるかモめそうを知ってるのか い?友達に聞いたんです。静かで眺めがい いって、その時の糸鉄の目は一瞬だけ細く なり、すぐに元の穏やかさに戻った。そう かい。開いてるよ。案内してあげよう。 その笑顔の裏に何か計算の影がよぎった ことにケ事だけが気づいた。宿は港から 十分ほど歩いた丘の上にあった。白い外壁 はハげ、木星の看板には錆びた鎖が垂れて いる。だが窓の向こうにはどこまでも 広がる青い海が見えた。部屋は2階の 突き当たり。トイレは元の奥だ。鍵を渡す 糸。鉄の視線が雪の首元のペンダントに 止まった小さな十字架の先で光が反射する そのキラめきを追うように男の目が一瞬 だけ変わるIA捕食者の目だったケ二は その視線に違和感を覚えたが何も言わ なかった。部屋に荷物を置き2人は3に 出る。午後の太陽が容赦なく照りつけ、 海辺の岩場では塩が跳ねた雪は夢中で シャッターを切り、ケ事二は隣でノートに 数値を書き込んでいたか風速水温。それは 2人にとって確かに幸福な時間だった。 その時までは午後5時遅い昼を取りに入っ た小さな食堂で雪はいつもより無口だった 。橋を持つ手が時折り止まり時計を何度も 見た。雪どうした?ううん。ちょっと疲れ ただけ。彼女は笑おうとしたがその笑は 作り物のように薄かった。ここ1ヶ月ほど 雪には誰かから頻繁に電話がかかってきて いた。樹を取ると外へ出て長く戻らない こともあった。友達としか言わない。剣事 は聞かなかった。信じたかったからだ。日 が沈みかけた頃、2人は宿へ戻ったロで 1人の男とすれ違う。30歳前後どこか糸 に似ている息子の大事。大事だろう。ケ二 がこんばんはと声をかけても男は返さずに 雪をじっと見つめた。その視線は氷のよう に冷たく。雪は顔を背けた。誰ださ。宿の 人じゃない。返事は短くどこか怯えていた 。夜7時、ケ二が足名の調査計画をまとめ 、雪がカメラのレンズを吹いていた時、 ドアがノックされた。雪が開けると昼間の あの男、スライ大地が立っていた。佐藤 さんですね。外で少しお話を。どなたです か?電話で連絡をくれた方でしょう。品物 を受け取りに来たと雪の表情が一瞬で 固まった。人違いです。いえ、確かに あなたの名前を聞きました。剣事が 立ち上がる。何の話だ?大学の先輩に頼ま れたことがあるだけすぐ戻るから。雪は ケ二を制し、靴を履いて出ていったドアの 向こうで足音が遠ざかっていく。ケ二は その場に立ち尽くした。夜が深まる部屋の 外はハミ音だけ20分30分1時間雪は 戻らない。不安を抑えきれず外へ出ると 宿人が玄関でタバコを吸っていた恋人が 帰ってこないんです。ああ、あの子なら うちの息子と散歩に行ったよ。その声は 穏やかだったが瞳だけが異様に冷たかった 。散歩どういうことですか?若い問同士だ 。星を見に行ったんだろう。彼女はそんな 子じゃない。糸は煙を吐き出しながら薄く 笑った。初めてでもそうじゃないようだっ たけどね。その言葉に剣二の思考が 凍りついた。雪はこの場所を知っていた。 波屋の一言が彼の中で何かを砕いた宿の光 が海面に滲む。波の向こうから再び赤い光 が散らついた懐中電灯のようで違う点滅の 感覚がまるで合図のようだった。ケ二は 走り出した。その先に待つのは彼女の レンズキャップだけだとは知らずにかめ層 の夜は静寂ではなく音の結落だった虫の声 も水槽も全てが途中で途切れて消える。 まるで島そのものが何かを聞かれたくない ように息を潜めている。そして誰も知ら ないまま1つの命がその夜ダミカ間に沈ん だ。それがひた10年後の証拠として再び 姿を表すまで夜の蝶がすっかり島全体が海 の行き遣いと共に沈黙していた。ケ二は ベッドの橋に腰をもろしたまま雪が出て いったドアを見つめていた。あの時のすぐ 戻るからという声はまるで遠い過去の録音 のように頭の中で繰り返される。時計の針 はすでに夜の9時を回り、窓の外には風1 つない。港からおるかに聞こえるハ人が しけさを逆に際立たせていた。部屋の伝統 の元でケ事は地図を広げていた。雪が 向かったであろう方向を必死に思い返す。 宿の裏手は細い小道になっており、そこを 抜けると海岸へ出る。崖の上から見ろす。 その浜は昼間は子供たちの遊び場だが、夜 は真っ暗な闇の穴だ。懐中電灯を握り、 ケ二は外に飛び出した。玄関を開けた時、 不に背後から声がした。どちらへ?宿の 主人糸鉄が闇の中に立っていた。顔の輪郭 だけが赤いたば、この日に浮かび上がる 恋人が戻ってこないんです。探しに行き ます。そんなに心配することはないさ。 糸哲の声は夜けに落ち着いていた。あの子 ならうちの息子と一緒に出ていった星を見 に行くんだろう。息子さんとどうしてです か?サーナ若いもの同士話しでもしてるん じゃないのか。ケ二の胸に冷たいものが 落ちた彼女は知らない男と出かけるような 人ではない。だがそれ以上の言葉を返せ なかった糸鉄の笑は美田にしない。ケ二は その場を飛び出し、宿の裏へ向かった塩の 匂いが強くなり、崖の先に海が広がる。 遠くで光が揺れていた赤い点滅懐中電灯で はない。誰かが何かを知らせているように 見えた剣二はその光を追って坂を駆け戻り た。靴底が濡れた岩を滑る息が荒くなり、 海岸へ出た時、月がカモカから顔を覗かせ た。そこに小さな木の船が一通浮かんでい たロープがほけたまま塩に揺られている。 足元の砂に何かが落ちていた。拾い上げる と雪のカメラのレンズキャップだった。 心臓が跳ね上がる雪。読んでも返事はない 。暗い網間に顔を近づけても見えるのは星 の反射だけだった。その時背後で足音がし た。ここで何をしてるんですか?声に 振り向くとそこに立っていたのは糸鉄の 息子。大事だった。白いシャツの袖が濡れ ている。雪はどこだ?さあ父と船で出かけ たみたいですよ。撮影に行くって船で こんな時間に夜の海の写真を撮るとか星と 海面の光を重ねたいって言ってました。 その説明は滑らかすぎた。ケ事二は男の腕 を掴んだ。嘘をつくな。本当ですよ。父が 案内してるはずです。大事の声にはどこか 事務的な冷たさがあった。ケ二の頭は混乱 していた雪が糸鉄とどう考えてもおかしい 。彼女は夜の海に出るような無茶はしない 。何かを隠している。を確信した瞬間、 糸鉄の声が背後から飛んできた。通報して も無駄だよ。夜は船は出せない。闇の中に 2人の影が並ぶ父と息子。どちらの目も 感情が消えていた。剣事は宿に戻った。 夜明けまで一もできなかった。窓の外の海 を見つめ、何度も時計を確かめる。朝4時 過ぎ、東の空がわずかに明るみ始めた時、 彼は外へ飛び出した。船つき場に行くと船 が戻っていた。だがそこに雪の姿はなかっ た。店内を調べても何もない。濡れた床と カに残る足跡だけ。彼は崩れるようにその 場に座り込みレンズキャップを握りしめた 。波が寄せ、足元を濡らす塩の音が狙う ように聞こえた。6時ケ事二は警察に 駆け込んだ彼女がいないんです。船に乗っ て出たまま戻ってこない。若い巡査が対応 に出た名札には鈴木とある。彼は眠気を 払いながら状況を整理し、冷静に書き止め た。宿の名前はかモめそうです。その言葉 を聞いた瞬間、鈴木の表情がわずかに 変わった。あそこは以前からトラブルが 多い。しかしすぐに口を閉ざし書類作成に 戻った捜索隊を出します。ですが会場保安 との調整が必要でそんなこと言ってる間に 雪がケ事の声が震えた気持ちは分かります が現行法では夜間の捜索はできません。 午前10時形式的な捜索が行われた2時間 で打ち切られ転落事故として処理。海は 予測できませんから、署長の松田が淡々と 告げた。そんなはずない。雪は泳げます。 健二の叫びは薄い長者の壁に吸い込まれて いった。その夜鈴木は自宅で眠れなかった 報告書に署名した手がまだ震えている。 彼女は本当に海に落ちたのか。頭の中で何 度も繰り返すロの窓から見たあの2階の 止めりを思い出す。親父も大丈夫なんだよ な。静かにしろ。壁に耳ありだ。その時足 を止めただけで引き返した自分、若い巡査 の小さな奥病それが20年後まで大引く などその時の彼は知る言うもなかった。 事件は数日で終わった。報道は小さな記事 1つ。観光客の女性転落か。遺体見つから ず観光客は沈黙を守り宿の名前は伏せられ た。宿泊客名簿は提出されず糸鉄は何事も なかったように営業を続けた。やがて秋風 が吹き観光客が去ると島は再び日常を 取り戻した。しかし夜の波だけはあの日と 同じリズムで打ち寄せ続けていた島の誰も がその音を聞いている。だが誰も聞いたと は言わない。そしてミさの年後、その沈黙 を破る最初の音が小さな無人島の岩場から 上がる錆びた金属の音。それは身の際に雪 が最後に触れたカメラのシャッターの残強 だった。波と2010年7月夏の海はあの 日と同じように穏やかだった。風も ほとんどなく、波は岸に触れるたびに砂を 撫でるように消えていくだが、そのしけさ を破ったのは1本の無線だった。無人島 母島西側の岩場で発骨とカメラらしきもの を発見。声を受けた軽視長捜査一家の鈴木 四録は一瞬手が止まった。胸の奥で 封じ込めてきた長がゆっくり浮かび上がる 佐藤行き。20年前、彼は若い巡査として 初動を担当した。そして何もできなかった 転落事故として処理され事件はわずか3日 で終わった以来鈴木の机の奥には1枚の 合わせたメモが挟まっているか相手鉄大事 再確認を彼はその紙を見つめた終わった 翌日現場へ向かった鈴木は防波亭に立ち 塩風を浴びた会場保安長の小型が騎士に つき監視院たちが慎重に白い袋を運び出す 袋の中からは砂と貝殻にまみれた骨と塩に 覆われ防水パックが出てきたパックの中に は1台の古い35mmフィルムカメラ メーカー名はオーリアンパスミュミュ当時 雪が愛用していたモデルだった。カメラの 背面は腐食していたが内部のフィルムは 奇跡的に残っていた金属部分は塩で固着し ており慎重な分解が必要だ。その作業を 指揮するのは警察科学捜査研究所の技師 ホム塩分除去にはまず脱水ゼラチンソが放 しすぎると入材が剥がれる。荒木は無言で 作業を続けた。まるで時を巻き戻すように 1枚1枚を洗浄し、乾燥室に並べる。鈴木 はその様子を見つめながら自分の喉が乾い ていくのを感じた身のこのフィルムに何が 映っている?数日後、復元作業は終わった 写真は全部で4枚。1枚目には港の三橋で 笑う2人。背景にはカモの看板だが看板の 元には一影があったぼやけた輪郭帽子を かぶった中年男。糸鉄だ。当時の報告書に は祝手の簡与話と記されていたその前提が 今崩れ始めた。2枚目の写真倉庫のような 建物の内部照明の光が斜めに差し込み埃り の粒子が漂っている。その中央に雪が立っ ていた表情は笑顔様だがその目は怯えてい た。右手には小さな十字架のペンダント。 その背後には何かを持った影がある。鉄の 輪のようなものを握り半分だけ映り込んで いる。式が拡大した画像に鈴木は息を飲ん だ。それは手錠だった。自撮りか隣の義師 が首を傾げる。いや、カメラの高さが高 すぎる。第3者が取った可能性が高い。誰 がシャッターを押した問いが空気を 切り裂くように鈴木の中で膨らむ。その頃 別道隊が一めを再調査していた。しかし 建物はすでに老朽化し廃墟当然口看板の元 には雑草がしり、玄関は板で打ちけられて いる。近隣の住民に聞き込みをするとこう 答えた。糸鉄さんは10年前に亡くなった よ。息子さんはどこかに行ったまま戻ら ない。糸哲は死に息子、大事は消束不明。 宿の後地を掘り返すと帳簿の断片が 見つかった。そこには特別客という欄が あり、名前のない記録が何度も繰り返され ていた金額の欄には大きな数字が並び、 その横に運搬、処理、確認といった言葉。 普通の宿泊長ではない。裏で何かが行われ ていた地元の漁師の証言がそれを裏付ける 糸鉄は金属を運んでたんだ。スクラップだ の同線だのでもあの人夜中によく船を出し てた罪には見せなかったがな。夜の海で 見えた赤い光。あれは合津だったのか。闇 の中で取引をするたちが使う会場での呼字 が見た光は偶然ではなかった。鈴木は拳を 握った2年前のあの夜俺はここにいた。彼 の脳りに宿の2階のが読み切る壁に耳あり だ。糸鉄の低い声見てみぬふりをした自分 署長の松田に言われた観光のために静かに しろあの時かかっていれば雪は生きていた かもしれない。鈴木は決意したも黙らない 。この写真が沈黙の鎖を断ち切る。そして 3枚目の写真の現像が始まる義師の手が 震える。これは光が暗室に差し込んだ瞬間 映し出されたのは夜の海に浮かぶ一層の 小舟。その側面にかれた白い文字が見える 。その船はすでに島のどこにも存在しない はずだった。だが、ある業子が呟いた。 まだあるよ。あの船俺が引き取ってる。 自称大が語る真実。雪の最後の瞬間を移し た第4の写真が全てを暴き出す。応郷その 名を聞いた瞬間鈴木の背筋がそこだった。 20年前の報告書の片隅に確かにその文字 が記されていたのを思い出す宿泊客が夜間 に目撃した船瀬王号を確認取れず。当時は ただの漁選の1つとして処理されたが、今 やその名が再び現れた。その船を保管して いたのは島の古い漁師佐々木夕日熟歳を 超えた男は塩風に焼けた顔に深い背後を 刻み、記者の質問に答えるように呟やいた 。糸哲が死んだ後、あの船を俺に 押し付けるように渡してきた。損海に 沈めるな。いつか誰かが来るからって言わ れたよ。鈴木は佐々木に同行して船を見に 行った防波堤の奥錆びた鉄扉の向こうに 小さな倉庫があり、そこに王号は眠ってい た。先体は劣化してはいたが形は残ってい た。ふ底には乾いた泥がこびりつき、内部 は埃りと油の匂いが入り混じっている。 砂側には白い文字で黄郷と書かれた痕跡。 鈴木は懐中電灯を照らしながら線内を調べ た。総加席の元に不自然な板の継目がある 釘が新しい。ここを開けてもいいか。 佐々木は黙って頷いた板を外すと、 薄暗らい空間が現れた中には古びたカが1 つ。泥にまみれて横たわっていた ファスナーは錆びて固着している。慎重に こじ明けると中から出てきたのは学生症と ノート。そして錆びた金属拳学生症には 田中健二の名前。彼は生きていたのか。 鈴木がつく。しかし学生の日付は1990 年雪が消えたあの日と同じ年だった。 ノートの中身を開くと塩に滲んだ文字が 浮かんでいる。行くゆが船に乗った糸鉄と 大事がついていった俺は叫んだが誰も聞か なかった。そして最後の湯。あの男たちは 海を知りすぎている。鈴木はページを閉じ 深く息を吐いた。このノートが語るのは 単なる事故ではなく計画された行動。海を 知りすぎている。つまり夜の潮流や狭きを 完璧に読んでいたということだ。事故を 襲うには十分すぎる知識。鞄の底にはもう 1枚の紙が挟まっていた送金伝票左出人は 株式会社小笠原資源回収受け取り人は糸鉄 金額の横に赤い委環間で処理完了の文字 資源回収スクラップだが裏面に走りがきさ れた文字があった女写真見た連絡するな 筆跡は乱れている誰かが恐怖に駆られて 書いたものだこの島で誰かが見たんだな。 鈴木は独り言のように呟いた。その夜警察 本部に戻ると映像解析犯たな報告が届いた 3枚目の写真。王号が夜の海に浮かぶ写真 の解析結果だ。船のカパの橋に2つの人影 があった。1人は小柄で髪が長い、もう 1人は背が高く腕を振り上げているように 見える。画像を拡大すると振り上げられた 腕に鉄の輪が光った。それは2枚目に移っ ていた手錠と同じ形状だった。これが雪の 最後の瞬間か。鈴木の手が震えた映像の橋 には波が砕ける瞬間の光跡が残り、カメラ のブレがうを示していた。誰かが海へ 突き落とされる直前。そのシャッターを 押したのは雪だったのか。それとも身同時 に島の漁師、佐々木が鈴木に1枚の古い 写真を渡した。これを持っていけ、ずっと 隠してた。そこには若い頃の糸鉄と大事、 そして見知らぬ若い女が映っていた女の首 には十字架のペンダンと雪と同じもの。 これはいつ取ったものですか?事故の2年 前だ。佐々木は荒野に火をつけた。俺は あの時見たんだ。あの船に詰まれていたの が人だったことを。鈴木の胸の奥で何かが 崩れ落ちる音がした。翌朝捜査本部は本格 的に動き始めた異コのDNA鑑定、写真の 再解析、資源回収の紹介。そして20年の 沈黙を破るように1人の名が浮かびやがる 。意図大事。彼は未だ行方不明。生きて いるとすればもう40代後半。父親の罪を 知って逃げたのか。それとも鈴木は窓の外 を見た曇空の向こうで波がゆっくり白く 砕けている。その音はまるで誰かのさきの ようだった。まだ終わっていない。その夜 鈴木のデスクに置かれた封筒。当ては なかった中には4枚目の写真のネガが入っ ていた。フィルムの橋にはシモン。そして 小さく書かれた文字。見たのは俺だ。苦を 光にかざすとそこに浮かび上がったのは 暗闇の中海に落ちる直前の雪の姿だった。 顔は恐怖に歪み片手で何かを掴んでいる。 もう片方の手はカメラのシャッターに伸び ていた。彼女は最後の瞬間まで証拠を 残そうとしていた真実は沈黙の底から ようやく浮かび上がろうとしている。自称 カモの帳簿と失踪した息子が語る20年の 島の秘密へ糸大事の所材が判明しました。 報告を受けた鈴木は握っていたペンを静か に置いて発見されたのは東京湾の古い造船 書とそこに隠れるように住み込みで働いて いた中年の男指紋称号の結果間違いなく 糸哲の息子大事だ。20年前彼は父と共に 宿を切り盛りし事件の夜雪と共に姿を消し た以来消束は完全に途えていた。逃げてい たのか隠されていたのか鈴木は呟いた。 警察は身柄を確保し、鳥長室に大事を座ら せた紙は白く日焼けした皮膚には疲労と 諦めが滲んでいる。しかしその瞳だけは まだ何かを拒む光を宿していた。糸大事 20年前の8月15日あなたは佐藤行を どこへ連れて行った?沈黙覚えていないと いうのか?大事は顔をあげ乾いた声で答え た。覚えてるさ。全部見てた。だがあの夜 俺も逃げ場がなかったんだ。やがて彼の口 から少しずつ過去が語られ始めた。 チティート鉄は観光客の送迎を予言い ながら裏でスクラップ金属の違法取引をし ていた。海底に沈んだ戦の通信設備や軍事 品を引き上げては売りさく資源回収と いう名の闇ビジネスだった地元の一部の 景官公案業者観光協会の人間までその利益 に関わっていた。そして1990年の夏雪 が島にやってきた彼女は偶然取っちまった んだよ。その倉庫の写真に罪が映ってた。 罪み。それは違法に引き上げた弾薬と金属 。それを糸鉄は処理するため夜に海へ 運び出していた女が写真を持ち出したら 終わりだ。だから父は言ったような気って 。雪は取引現場を偶然撮影してしまい、 それを隠そうとしたが糸鉄たちはすぐに 気づいた。俺は止めたけどもう遅かった。 父が船に連れ出したんだ。声が震える。 彼女は抵抗した。カメラを手放さなかった 父が怒鳴って殴った。その時波が来て バランスを崩した。海に落ちた。俺は手を 伸ばしただが父が止めたんだ。仲間な証拠 ごと沈めろ。鳥長室の空気が重く沈む。 鈴木の米かが脈打つ。お前はその後どうし た?父は俺に金を渡していった。このこと は忘れろ。島を出ろ。そしてお前は逃げた 。大児は小さく頷いた。逃げたってより 生き延びた。誰も俺を探さなかったけど夜 になると海の音が耳から離れなかった。 ずっとあのシャッターの音が鳴ってた。 鈴木は静かに立ち上がった。雪のカメラ から写真が出た。4枚目にお前が映ってる 大児の顔が歪む。あの女は最後まで シャッターを切ってたのか。そうだ。真実 を残すために。しばし沈黙が続いた後、 大事はゆっくりと語り出した。父はその後 夜中に船で何かを沈めに行った。俺は浜 から見てた。海の中に何かを落とす影。次 の日には何事もなかったように事故にされ た。通報しなかった理由は誰も信じちゃ くれねえよ。島全体が父の客だった。解捕 も警察もみんな知ってて黙ってた。鈴木の 喉が詰まる。この島は互いの沈黙で立って いる。あの言葉が20年の時を超えて現実 として突きつけられた。取り調べの最後に 大事は1枚の紙を差し出した古び封筒。中 には当時の宿長のコピーが入っていた客の 名前の欄に見慣れない筆跡でこう書かれて いる増田木諸長の松田当時鈴木の上司だっ た男だ。まさか鈴木は息を飲んだ。父は あの人に金を渡してた。何もなかったこと にしてくれしたって。だから捜作は早く 打ち切られたんだ。その瞬間20年間の 違和感が線でつがる報告書の完結さ、上 からの圧力そしてあの不可快な沈黙。全て は金で買われた沈黙の網の中で起きていた 。糸鉄は死んだけど記録は残ってる。 そしてお前は証人だ。鈴木の声がわずかに 震える大地は目を閉じた。俺のせいで1人 の女が死んだ。その償いをどうすればいい ?真実を語ることだ。それだけが彼女への 許容になる。その日の夜、鈴木は報告書を 打ち込みながら、机の上の古いレンズ キャップを見つめたあの日、港で拾った もの。誰にも渡せず20年の間、ずっと 引き出しの奥で眠っていた。彼はそれを そっと手に取り、窓の外の夜の海へ向けた 。波の向こうでトが1つ揺れた赤い光、 20年前と同じ感覚でゆっくり点滅して いる。鈴木は呟いた。終わりじゃない。 まだ誰かが見ている。師匠、署長、松田の 沈黙と海が返した最後の記録。翌朝軽視長 の元に足音が響いた。鈴木は報告書の封筒 を手に署長室の扉の前で立ち止まる プレートには松田サの目20年前自分が 最初に報告書を差し出した相手あの時の 言葉思考観光に響くことはするな。絵が耳 の奥で再生された。ノックをすると重い声 が変える。れ、室内には松田の白神混じり の頭が蛍光灯の光を反射していた。身の板 がそのマざしだけは冷たい鋭さを失ってい ない。久しぶりだな、鈴木。ええ、10年 ぶりですね。で、何のようだ?鈴木は机の 上にファイルを置いたか事件の再操作です 。証拠が上がりました。松田の手が止まる 。そんな名の事件はもう存在しないはずだ 。存在しなかったことにされたが正しい です。言葉のトに室内の空気がピンと 張り詰めた。鈴木は封筒から4枚目の写真 を撮り出した。これを見てください。松田 が老ガをかけ、写真を覗き込む。夜の未線 大郷。その看板の上に糸鉄と雪が立って いる。糸鉄の手には鉄野はその向こうに もう1人の影、カメラを向ける息子、大事 。そしてシャッターが切られた瞬間に雪の 身体が後ろへ傾いているカメラはそのお元 の直前を切り取っていた。この写真は防水 パックの中から見つかりました。雪は 落とされる瞬間にシャッターを押していた んです。続きは続ける。現像の結果カメラ の外装に糸鉄と大事。そしてあなたの指紋 が検出された。松田の顔から血の木が引く 。バカな私は現場に行っていない。確かに 直接の反抗ではない。しかし報告の改ざに あなたの署名があります。鈴木はファイル を開き、当時の報告書を並べた手書きの サイン金額の天気、そして処理剤の赤い 利子。送金先には松田の個人講座。糸鉄 からのワイ路ですね。証拠はあるのか? あります。帳簿にも封筒にもあなたの名前 が残っています。沈黙の音だけが部屋に 響く、松田はゆっくりと椅子に背を預けた 。もこ私はまだ署長になり立てでな。島の 予算が削られ、観光客の数でしか評価され なかった。だから事件を隠した。違う。 守ったんだ。島の生活を鈴木の拳が震える 。あなたが守ったのは数字です。人じゃ ない。松田は視線を落としたまま静かに 言った。お前も見ただろ。当時の空気を 意味なかったことにするとことが唯一の 平和だったんだ。それで1人の命を若い お前には分からん。秩序を保つことが正義 だと信じていた。鈴木は一歩机に近づいた 。俺はあの夜のマインを今でも覚えてる雪 が助けを求めていたかもしれない。それを 俺たちは都合で切り捨てたんだ。松田は窓 の外に視線を向けた空は灰色に曇り、遠く の海がぼんやりと光っている。あの海は俺 の夢にも出てくる。沈んだものはいつか 必ず浮かんでくるんだな。そうつくと彼は デスクの引き出しから小さな鍵を取り出し た。これは金庫の鍵だ。俺が保管していた 報告書の原本がある。そこに全て書いて ある糸鉄の教述写真の償却命令。俺の署名 もな。鈴木はそれを受け取った罪を償う つもりですが償えるならな。翌日警察は 正式にか掃除事件を再として立憲報道が 流れ島は再びざめいた20年前の観光客 失踪。警察官部が観与化ニュースの テロップを見た島の人々は口を閉ざした。 しかしその中で1人名乗り出たものがいた 。佐々木ゆさん。彼は報道人の前でこう 語った。あの夜3人が船に乗ったのを見た 。でも俺は何も言えなかった。言えば仕事 を失うからだ。今もあの赤い光が夢に出る 。赤い光。それは夜の取引用の合図島だが 、今その光は罪を暴くための継承になって いた。松田は間もなく自主した集会と職務 タマ、証拠因滅の罪、糸哲鉄はすでに死亡 しており、大事は証人として裁判に立つ。 膨張石の最前列には白髪の混じり始めた 田中健二の姿があった。20年分の沈黙を 抱え、彼はただ黙ってその光景を見つめて いた。判決の日、松田は小さく頭を元げた 。真実を見逃した罪は誰にも幸わされない 。その声は法廷に吸い込まれるように消え た。外へ出ると雨が降り始めていた。鈴木 は空を見上げる。ゆの匂いがする。遠くで 来名。その元で誰かがさくように言う気が した。まだ海は返していない。事賞波が 最後に差し出した白い骨と雪が残した祈り の記録。2010年7月28日午前9時、 東京科学警察研究所の映像復元室暗室の 中邪が流れていた鈴木はガラス越しにその 様子を見つめる4枚目の写真最後の1枚が ついに復言されようとしていた。技術者が 慎重にフィルムを幻像駅に沈める駅面が わずかに揺れる20年前の海の記憶が駅の 中からゆっくりと姿を表していく。鈴木は 唇を固く結んだ。隣には若い刑事小林。彼 も息を潜めてその瞬間を待っている。映り ました。技術者の声が震えた画面に 移し出されたのは暗闇の中の顔。それは 佐藤行きだった恐怖に引きつった表情。 開かれた口。その後ろに糸鉄の影が立って いた。彼の手には分厚い鉄のは線のかれ 竜宮具。そして振り戻ろされる瞬間カメラ はその切那を切り取っていた。部屋の空気 が止まる。鈴木は喉の奥で息を飲んだ。 これが最後の瞬間か。画面を拡大すると雪 の瞳に何かが映っていた。それは彼女が 見つめた最後の光、赤いり沖の取引線の シグナルだった。そしてその光の元にもう 1人の人影細みの体立ち尽くしていたのは 糸大事だった。大事も見ていたのか。鈴木 の声がわずかに震える順は小さく頷いた。 父親が振りもろすその瞬間を息子は見てい た。そして何もしなかった。写真は20年 にその沈黙の共犯を告発していた。鈴木は 席を立ち、研究所の元を歩いた長い夜の 果てに真実はようやく形を持った。だが心 の重さは少しも軽くならない。真実を知る ことはやしではない。それは傷を開くこと でもある。元の窓の外、曇り空の元夏の雨 が静かに降り始めた。鈴木は深く息を 吸い込み呟いた。ゆきさん、あなたは最後 まで戦ったんですね。その日の午後、鈴木 は田中健二を尋ねた東京外の小さな アパート玄関を開けると、痩せ細った男が 立っていた。彼の部屋の壁には1枚の写真 2人が笑顔で並ぶ青い海の風景佐藤ゆさん の件で伺いました。鈴木が名乗るとケ二は 息を飲んだ。見つかったんですか?ええ、 彼女をあなたが探していたあの島の東の 無人島で発見されました。ケ二の顔が しゃりと歪む。彼はその場に崩れ落ち、 両手で顔を覆った。やっぱり死んでいたん ですね。鈴木は静かに頷いたけれど彼女は 自分の死を記録していました。最後の瞬間 シャッターを切ってあなたに託すように。 鈴木は写真の複製を取り出した。ケ二の手 に渡された瞬間、彼の体が震えた雪の目 三鉄の話はそしてシャッターの光。これが あの夜のはい。彼女は自分が何に巻き込ま れているかを知っていた。だから証拠を 残した自分を沈めさせないためにケ事は 泣き崩れた。僕は何も知らなかったんです 。彼女があんな危険なことを知っていても 止められなかったかもしれません。彼女は あなたを守っただから何も言わなかったん です。沈黙が流れる外では雨が激しくなり 窓を叩いていたケ事二はゆっくりと顔を あげた葬儀をしたいんです。あの島で彼女 が取った海の前で鈴木は頷いた準備を整え ましょう。彼女の魂をようやく海へタワす 時が来ました。数日後、小笠原の海は 晴れ渡っていた。小さな船の上には鈴木、 健二、そして雪の両親、花束と白いコツボ が静かに揺れている。母親が涙を流し ながら行った。ようやく帰ってきたのね。 ケ二は古い写真を撮り出した2人が笑って 撮ったあの港の写真。雪、ごめん。君を 守れなかった。でももう隠さない。君の 真実を全部話すよ。花が波に流される。 陽光が反射して海面が眩しく光る。鈴木は 海に向かって深く頭を元げた。どうか 安らかに眠ってください。あなたの残した 真実はもう消されません。波の音が静かに 返す。いいありがとう。その声を確かに 聞いた気がした。しかし物語はまだ終わら ない。鈴木の手元に届いた1本の封筒左出 人不明中には1枚の写真。言いある。誰か が港で雪を撮影している。その背後に移る もう1つの影。糸鉄でも大事でもない。 そこにいたのは鈴木自身だった。鈴木の 指先から封筒が滑り落ちた床の上で写真が ゆっくりと裏返える。そこに移っていたの は1990年の夏のと、そして若き日の 自分皆巡査服に袖を通した鈴木が桟橋の 手すりに持たれて立っている。笑っている 。その視線の先にはカメラを構える佐藤行 の姿。そんなはずはない。胸が冷たくなっ たあの日、自分は確かに宿の巡に出ていた 雪と健二が到着した時間帯には港にい なかったはずだ。だが、この写真が示すの は彼女が船を降りた瞬間、マスーその場に 自分がいたという事実。封筒の中にはもう 1枚髪が入っていた打ち込みの文字で立っ た一号。あなたは本当に見ていなかったの ですか?鈴木は机の橋に手をついた頭の奥 で記憶の断片が揺れ始める。港の騒音、塩 の匂い、セミの声、そしてあの赤い光。 自分は確かに誰かの視線を感じていた。 それが彼女だったのか?それとも誰かが 自分を見ていたのか。 要の夜、俺は本当に何を見た?その問が脳 を支配した。彼は写真を持って研究所へ 向かう監式技術者が顕微鏡で拡大し、解析 を進める。確かに撮影者は佐藤幸も本人の カメラです。そしてこの写真時間の記録は 失走の2日前ですね。2日前。Aつまり 彼女は島に着いた直後にあなたを取ってい た。そしてその後に霊の倉庫を撮影して いる。鈴木は目を細めた。はなぜ自分を 取った?その夜ホテルの部屋で1人写真を 見つめ続けた波の音が遠くに聞こえる ライトを落とすと写真の橋に真かな手書き の文字が浮かんだ。あなたは信じてくれ ますか?それは彼女が残した最後の メッセージのようだった。胸の奥で何かが 崩れたあの日は助けを求めていたのかも しれない。港で出会った若い警官まつまり 自分にだが自分は形式に縛られ報告書の枠 に閉じ込め夜の捜作は不可証拠なしと 言い訳を並べた。彼女が差し伸べた手を 見過ごしたのだ。俺もあの夜の共犯者だっ たんだな。呟いた声がかれた。翌朝、鈴木 は再び小笠原へ飛んだ。海は穏やかで風が ほとんどない。カモめの後地はすでに高地 となり草が伸び放題だった。だがその中央 に1本の桜のが植えられていた。誰かが 置いた小さな石碑。1990年8月15日 佐藤雪と刻まれている花束の横に新しい 教物。それはあのレンズキャップだ。誰が 鈴木は辺りを見渡した誰もいない塩風だけ が草を揺らす。その時後ろから足音がした 。来ると思ってたよ。声の主は糸大事だっ た。彼は過釈法の身で島に戻ってきていた 。お前か。これを置いたのはああ、彼女の ものをやっと返せた。大児は小さな瓶を 取り出し、中から折れたペンダントを見せ た十字架のかけら海で見つかったんだ。父 が沈めた船の残骸の中にあった。2人は 黙って海を見た波がゆっくりと寄せ引いて いく。大事がぽつりと言ったなあ刑事さん 海って怖いよな。何を飲み込んでも静かに してるけどさ、あいつだけはずっと目を 開けてた気がする。鈴木は頷いた。ゆき さんは沈黙に勝った俺たちは沈んに負け 続けてきた。風が吹き抜け桜の歯が一ひ 落ちた。鈴木はそれを拾い海へ投げた水面 に浮かんだ歯が遠くへ流れていく。彼女の 意思を記録に残すよ。見なかったことに する。時代を終わらせるためにそれで報わ れるのか分からないけどそれでもやる。 2人の間に長い沈黙やがて鈴木は夏から 小さなカメラを取り出し空へ向けて シャッターを切った。その音が遠い昔の夜 と重なる。彼が残した写真には青い空と1 本の若き、そして海に光る白い十字が映っ ていた。20年の沈黙はついに終わった。 だが、海はまだ何かを抱えている砂の元で 眠るもう1つの真実。その存在を誰も知ら ない。自称最終賞海が語る声。20年後に 再び現れた新たな記録者がこの物語の 終わりを静かに書き換える。2人2030 年春小笠原の海はいつものように静かだっ た。しかしかつてカモがあったみ先の上で は1人の若い女性が3脚を立て海に向かっ てカメラを構えていた。彼女の名は田中 美所、田中美あの田中健二と佐藤行き2人 の娘だった。美書は東京で報道カメラマン として働き、母の名が刻まれた日の前に 立っていた。10年前、父が亡くなる前に 残した封筒の中にこの場所の地図と1枚の 手紙が入っていた。肉、真実はまだ終わっ ていない。お前がこの海を取る時が来たら 肉その時全てが見えるだろう。彼女は カメラのファインダーを覗く波が穏やかに 打ち寄せ太陽が傾く。その瞬間海面に赤い 光が反射した。まるで誰かが海の底から 合図を送っているかのように。美書は無 意識にシャッターを切った。いかしその音 が風に溶けて消える。その晩宿に戻った 美書は撮った写真を確認した画面には 夕暮れの海と水平線だがその右端に薄く人 一影のようなものが映っていたぼやけては いるが、確かに誰かが海を見つめている風 に揺れる長い神。その輪郭は若き日の佐藤 行きに似ていた。美書の背筋に冷たいもの が走る。お母さん彼女は思わず呟いた。 同時に窓の外で稲び光が走った稲妻の光が 一瞬部屋の壁を照らす。そこには誰も置い た覚えのない1枚の古い写真が立てかけ られていた港に立つ雪とその向いに立つ 若き景官。続き、裏面には小さく手書きの 文字、いい見ていたのはあなたたち全員 です。美書は写真を手に取り、静かに息を 吸った。そうか。誰も犯人じゃなく誰もが 沈黙の一部だったんだ。翌日、美所は再び へ向かった。桜の木は成長し、枝を広げて 花を咲かせていた。その元に古い十字架の ペンダントがかけられている。彼女は母の 異品をそっと抱きカメラを向けた。 お母さん、これが最後の1枚だよ。 シャッターが切られた瞬間、風が吹き抜け た花びが舞い上がり、海へと流れていく。 その中でほんの一瞬波の間に人の影が見え た白いワンピースにカメラを持った女性。 彼女は微笑んでいた。美所は目を閉じ、 呟いた。もう大丈夫。あなたの物語はもう 見えなかったことにはならない。海は静か に答えた。他人が遠くで優しく砕ける。 塩風が頬を撫でどこからか鈴木の声が 聞こえるようだった。意味届ける勇気を次 に渡せ、カメラの中の映像が最後に光を 放つ、そこには3人が並んでいた大、若き 日の雪、健二、そして鈴木、皆を背にして 微笑んでいる。やがて画面が白くにみ、母 だけが残る。沈黙は終わったけれど、海は 今も語り続けている、見なかったことにし ない者たちの物語を。

1990年、青く静かな小笠原の海で、ひと組の若い恋人が忽然と姿を消した。
警察や海上保安庁の必死の捜索もむなしく、二人の行方は永遠に闇に包まれたかに見えた——。

それから20年後。
台風の翌朝、近くの島の浜辺に、一冊の古びたノートが漂着する。
その中には、誰にも知られていなかった“あの日”の記録が残されていた。

彼らは何を見たのか。
そして、なぜ戻れなかったのか——。
海が静かに語り始めた、20年越しの真実。

📌 高評価とチャンネル登録は、次の物語を紡ぐ大きな励みになります。
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22 Comments

  1. ノートの内容がもっと知りたい!どんな言葉が書かれてたんだろう…想像するだけで切ない。

  2. また“作り話”っぽいって言う人がいるけど、事実は小説より奇なり。私は信じたい。

  3. 20年の時を越えて届いた“声”…ロマンチックだけど、どこか怖さもあるね。

  4. こういう動画、昔の未解決事件を思い出させるから好き。でも、ちゃんと裏付け取ってる?

  5. 波に流されたノートが20年後に戻るなんて、まるで映画のよう。でも、潮の流れ的に本当にあり得るの?

  6. 20年も経ってから見つかったノート…信じられないほどドラマチック。でも本当に実話なのかな?

  7. 信じるか信じないかは別として、“忘れられた2人”の物語として美しかった。久々に鳥肌立った。

  8. 小笠原の海にそんな秘密があったなんて…。でも、ノートが本物ならニュースになってたはずじゃ?

  9. 真実よりも“人の想い”を描いてる感じがして泣けた。最後の語りが胸に刺さった。

  10. ノートに残された“あの日の約束”って部分で涙が出た。誰かの記憶が、ちゃんと海の底で守られてたんだね。

  11. このシリーズ、どんどん脚色が強くなってる気がする。実際の資料とかも紹介してほしい。

  12. この話、昔聞いた噂と似てる…。やっぱり実在した事件なのかな?場所も小笠原って書いてたし。

  13. この話を聞いた瞬間、胸が締めつけられた。生きて帰れなかった2人の想いが、海を越えて届いたのかな。

  14. 信じがたいけど、もし本当なら奇跡。人の想いって、海よりも深く残るんだね。

  15. 行方不明事件の動画って怖いのに、これは不思議と温かかった。愛の形って本当にいろいろだね。

  16. “20年後に真実が流れ着く”ってタイトルのセンス最高。最近の動画の中で一番引き込まれた。

  17. 信じがたいけど、もし本当なら奇跡。人の想いって、海よりも深く残るんだね。

  18. 行方不明事件の動画って怖いのに、これは不思議と温かかった。愛の形って本当にいろいろだね。

  19. “20年後に真実が流れ着く”ってタイトルのセンス最高。最近の動画の中で一番引き込まれた。

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