【朗読】「夜の辛夷(コブシ)」岡場所で交錯する“秘密”を持った男女を描く!【恋愛・ロマンス・時代小説・歴史小説/山本周五郎】
[音楽] 今回は山本集郎の夜の拳を朗読します。 [音楽] が初め元吉を客に取ったのは12月18日 の番であった 。夜の11時ちょっと過ぎ 。じめじめしたどまに立って雨を避け ながら客を待っていると 傘も刺さず反転を頭からかぶり懐出した彼 が通りかかってこっちを見た 。その時、小タと一緒に友とお墓がいて彼 に呼びかけた 。お墓は18、友は17歳で24になるお とは年も離れていたし、2人とも売れてる りだ から料は ともかく神下もちゃんとしていたし、着物 や帯も悪どいほど派手な目立つものをつけ ていた。 お滝 は彼を目で捉えた 。物も言わずに黙っ て上目使いに見つめ てその目を素早くそっと伏せるのである 。彼はその目に捉えられまっすぐにお滝の 方へ来た 。とえやお若の方は身もしなかった。 はまた上目使いに彼を見て 、 私おきっていうのよと言った 。彼は頷いてど前へ入った 。お滝は彼の切を持って上がり、奥の余班 へ導いていった 。後ろでおわが低く鋭くのしるのが聞こえ た 。止まってってくださるわね 。せを片付けながらおきが聞いた 。彼は立ったままうんといい 窓のところへ行って生事を開けた。そこは 天窓が閉まっていた [音楽] 。こっちがごげ元様かと彼が聞いた。 え、そうよとおきが言った。開けましょう か 。彼はうんと言った 。おタきは立っていって雨を開けた 。3弱置いていたべがあり、その向こうに ネズ源の子立ちが真っ黒にのしかかるよう に間近に見え、雨が降り込んできた 。寒いわとお滝が言ってそっと彼 に寄り添っ たねえ 。本当に止まってくださる の彼は。うんと言い ながら天と生事を閉めた。 嬉しいわと言い ながらおたきは彼の胸に持たれた 。そこは濡れて冷たかった 。おき は今火を持ってくるわねと言い、安を 明るくしておいて部屋を出た。 火の怒っている日バを運び、それから浴衣 と単を重ねた寝巻きを持ってきた 。火バなんか持ってきていいのか ?本当はこの土地ではいけないんだけれど 、あなた濡れてらっしゃるんですものとお は寝巻きの襟りのところを火バにかざして からさあ着替えましょうと立ち上がった 。彼は28区に見えた。目にちょっと剣は あるが、重長の尋常な顔立ちで痩せ方の肉 の閉まった弁償そうな体つきをしていた 。 その彼はお滝を近寄せなかった 。お滝の方でもいつものように強ることが できず 。やっぱり私が嫌いなのねと恨みを言うの が精一杯であった。 [音楽] 嫌いなら止まりしないと彼は言った。 俺はこんな勝なんだよ 。あ、彼を送り出す時、お はもういらっしゃらないわね。 と言った。彼は一言来るよと言い、まだ 振り足りなそう な陰キに曇った空を見上げ 。そしてこちらは見ずに去っていった 。もう来ないかもしれないとおきは思った 。だがその夜また彼は来た。 ちょうどネ岸のマさじに呼び出され、店先 で話していると、向こうから彼が来てすっ と店へ入った 。あんまり思いがけなかったので、おきは ドキりとし、すぐには声も出せなかった 。彼は怖ったような顔で去っていくマさじ の後ろ姿を見つめ、すぐにその目をそらし ながら上へ上がった。 時刻は12時を過ぎていた。女主人のお浜 は酔いのうちに旦那が来てその時はもう寝 ていたし。しげるには止まり客がありと お墓の2人が45人ずつ客をこなした後で 長日バにしがみつき駄菓しをつまみ ながら何かボそボそ話していた 。そうよ。それが忍ってもんよとおわかが 言った 。誰だって泥棒や強盗なんかしたくはない わ。暮らしに困って他にどうすることも できないからするんじゃないの 。私たちだって好き好んでこんな商売し てるんじゃないわ とが言った 。ああ、親兄弟のためとかそうでなくても のっぴきならないわけがあって、それに 死ぬような思いで身を沈めたんだわ 。どっちも巡り合わせが悪かったんだし、 日陰者っていうことでは同じようなもん じゃないの 。それを疎人する人がいるんだからねと おわが言った。 日陰でどっちも世間からつきされてる人間 じゃないの ?そう分かってもかってやるのが忍女って もんだわ 。おは食べ終わった箸と茶碗を置き 、 ちょいと2人に呼びかけた 。その話は私に当て付けかい 。さあどうかしらとおかはそ歩向いた 。あのネ岸のマサっていう人がおかっぴき で誰かがその手先で教情持ちが来ると密告 するっていうことを聞いた からその話をしていただけだわ。 白ばっくれのよしを私に当て付けて るってことぐらい分からないような当じゃ ないんだから。あら、そうとおわが言った 。私 は自分の子を育てるためなら何でもする 。目にお城いでシも隠すし必要があれば年 もごまかす。あ、私が騙すんじゃなく客の 方で騙されに来るんだ。人世よの情けだっ て情けのうちさ。24っていうより17と 言った方が良ければ17のような気持ちに なって楽しませる 。誰のものくねるんでもない。自分の体 売ってるんだよ。自分の体をだよ 。おきの目から涙がこぼれた。 こんなことになったの も悪いやつに騙されたからだ 。私は男が憎い 。悪いことするようなやつはもっと憎い 。誰がなんて言おう と教情持ちと見たらこれからだってさして やる。ああ、きっとさしてやるさ。 は善をそのままにして立ち、涙を吹き ながら内緒出ていった。は、体操ねという おかの声 が後ろで聞こえた [音楽] 。部屋へ行ってみると 、彼は眠っていた 。お、は低い声でサ度ばかり呼んでみたが 、彼はちょっと唸って願ったまま起きる 様子がなかった。 は着替えもせ ず自分の寝床へ 入り冷たい駆け布団をかぶってしばらく 泣いていた。 泣きね入りに眠ったらしい。明け方に目が 覚めたの でそっと彼の寝床へ滑り込んだ 。しかし彼はすぐに目を覚まし 、お滝の手と足から匠に身をそらして静か に よせよと支いた。お滝はいやと言って かじりついたが 、彼はその手と足を押さえてどうしても 自由にさせなかった。彼は口の思い分 らしく、自分からは何も言わないが、おき が聞けば素直に何でも話した 。彼の名は元吉で年は27 。うちは外神田で大工をしていた 。父親は手間取りから仕上げて糖にまで なったが、1人息子の彼はわがまま いっぱいに育ち、156から爆地を覚えて すっかりグれてしまった 。今でもぐれっぱなしなの?まあねと彼は 唇で笑った。まあそんなもんだろうね 。その時、お はなんて寂しい笑い方だろうと思った 。それからいくか経っ て早くお嫁さんをもらってご両親を安心さ せるのねと言う と彼はしばらく間を置い て手遅れだ よと言った 。 親父は5 年前に死んじまった。亡くなったの?うん。彼は言った。首をくってね、バカのこと言わないで。本当さと彼は無感動に行った。本当に首をくって死んだんだ。 おは息を潜めた 。彼の父親は大きな建築を受けた 。今川橋の山代というご副省が京橋日目に 新しく店を立てる 。土蔵付きで走行費1200両の工事だっ た 。彼の父親には二の思い仕事だが仕上げれ ば糖領としての幅が広くなる。組み合いの 役つきにもなれるだろう 。それで無理をして受け寄った 。山代は京都の出そだけの不審に敵を1割 しか出さなかった 。彼の父親は百方狩りをしてようやく壁を 塗り終わるところまでこぎつけた 。そしてあるよ 。それが家事で前勝した。ほとんど不審は 終わっていた 。飾り屋の仕事が少し残っているだけだっ たが、綺麗さっぱり丸やけになってしまっ た。 原因は分からなかった。飾リアの職人の 不始末と思われるが 証拠はなかった 。また一方ではその工事を競り合った相手 の大工がやったのだという噂もあった 。これも噂だけのことでどうにもならない 。大木屋を始め縦具や盛屋根屋など借りた 銀素を別にしても支払わなければならない 金を山と背負った 。これらの支払いができなければご府内で はもう大工の職は立たない。 しかも山代が渡した敵の返済を求めてきた [音楽] 。親父は気のいいクソ真面目な将文だった と彼は言った 。手間取りから叩き上げて一応東僚と言わ れるようになり 、もう人の主というところだった 。だがそこで足を救われた 。クソ真面目な将文だから借金を捨てて 逃げることもできなかったんだろう 。5年前の10 月うちの裏にあっ た木屋 で彼 はそこで口を継ぐんだ。 は黙った ままそっと手を伸ばし て彼のヤグの中を 探り彼の手を探してそっと握った 。彼の手は握られた まま力の抜けたように動かなかった。 そしておっかさん はとおきが聞いた。もうやめだと彼は頭を 振った 。こんな話はたくさんだよ 。そっちへ行ってはいけなく てお休み 。彼は握られた手を離して窓の方へ根返り を打った 。あの花は何だと彼が聞いた 。お滝はどれと言いながら 裾の方を回って窓際へ行った 。少し温かすぎる番だったけれど、12時 を過ぎたのでさすがに気温が下がり、窓際 に立つと寒いくらいだった 。板部の向こう見ると真っ黒な小立ちの中 に高くほのかに白くポツポツと咲き出して いる花があった。 [音楽] 4日ばかりある日、黄れに先頭へ行って 帰るとネ岸のマさじが待っていた 。聞きたいことがあるんだとマサージは 上がろうともせずに言った。おめの お馴染みのあれあの元吉っていうお客に 掘り物があるか ?さあ知らないわね。知らねえって 。私 まだ一緒に寝たことがないのよと。おは 事情を話した。だから肌もよく見たことが ないんだけれど 。お場所へ来て1人で寝るって世の中に おかしな客がいるもんだな 。入れ済 ってどこにあるの?あれば左の胸だと マさじが言った。すまねが見てくれ。 とすれば何大したことじゃねえとマサージ は軽く言った 。つまらねえようなことなんだが念のため だから見といてくれ 。おきは承知した 。爆地をやっているようだから、その方で 何か間違いでもあったのかもしれないと お滝は想像し、だが 、おそらくあの人には入れ済みなんはない だろうと思った 。彼は中6日置いて7日目の夜11時回っ てから来た 。前の日の夜中から降り出した雨が病まず 、少し風さえ出て高い気温と湿気のために 肌が汗ばむほどムしした 。そのはまだ1人も客がなかったし、その 時刻では後の望みもない 。友と赤には客がついたのに、お滝とお島 が売れ残っていた 。やっぱり若いもには叶わないんだな。 ぞめきの客もなく雨に叩かれている路ジを 眺め ながらお滝は身に染みてそう 思いてしまうかと独り言を呟いた 。その時戸口にいたお島がこっちへ 振り向い てあの人よと言った 。彼が邪の目をすぼめながら入ってきた。 お滝は気が上がってすぐには口を聞くこと もできず、彼が手ぬいでスを吹きはしょっ ていた巣を下ろすまでバカにでもなった ように立って眺めていた 。どうしたと彼がこっちを見た 。おはやっと微償し てお帰い。と言ったが 、その美将はベスを書くように見えた 。本当のところ今にも涙がこぼれそうなの で、おは彼の手から手ぬいを取り、しきの かかった片袖を拭いた 。彼の下駄は泥だらけでそのままでは持っ て上がれない 。揚げ豚の中へ入れ、よく水を切った傘 だけ持っていつもの余へ案内した。傘を 片付け寝巻きを揃えているとお島が来て ちょっとと手招きをした 。今頃になって逆か。どうしよう 。おは下打ちをしたいような気持ちで彼の ところへ寝巻きを持って行き着替えさせて から店へ行った 。するとお島が橋の3を指さし てそこよと言った 。客ではなくネ岸のマッサージであった。 来た だろとマさじはお滝を見た。 え、たった 今あれ確かめてくれとマさじは言った。俺 はここで待ってる 。お滝はまた不安になった。マさじはおき が不安を感じたことに気づいたのだろう。 心配するなと笑い 。どっちにしろ大したことではないんだと 言った。 上班へ戻ると、彼はまどか町に腰をかけて ぼんやり外を眺めていた 。ああ、雨が吹き込むでしょうとお滝は そばへ寄った。何を見てるの ?すっかりさえちまった。何がとお滝は彼 に持たれた。あの白い花さ。 あら、本当だ。もう終わりだわね 。子立ちの中のその花 はこの前には先端めでほんの白くてんてん と見えるばかりだった 。今でも花は固まってはいない。木が高い し枝がまばなのでパラっと広がっているが もう逆りをすぎていることは嫁にも分かっ た。 枝の1つはこちらへ伸びているので、塩れ た花がいくつもあるのが見分けられた。 それは小ぶりになった雨の中でひっそりと 静かに何かを1人投いてでもいるような 先方に見えた 。風でいつかばかり寝たんだ 。彼はそう言って一部を盆の上へ置いた。 まさかここまで寝に来るわけにもいかない だろう 。あら、嫌だ。それなら濡れてはいけ なかったんじゃないの ?おは寝床を引き終わり、そばへ行って彼 をまどか町から立たせた。さあ早く寝て ちょうだい。お家が分からないから手紙を あげることもできないし 寂しかったのよ。 彼は寝床へ入り 、行っておいでと言った。 窓を閉めましょうねとおきが言った。 いやあ、もう少し開けておこう 。こう無視はやりきれない 。でも風を引き直すといけないわ。大丈夫 だ。もう少し経ったら自分で閉めるよ。 ではねとおきは彼の脇へ座っ た ねえとお滝が支い た彼 はなんだと言っ たねえとお滝が言った ちょっと肌だけ触らせ 彼は黙っていた 。お滝は手早く帯を解き、着物を脱いで 下着の襟りをぐっと左右に広げた 。まだ十分に艶のある肌で色は少し浅黒い が両のさも子供だにも関わらず固く緊張し ていた。彼は 綺麗だなあと言った。おきは 恥ずかしいと言い ながら彼の寝床へ滑り込んだ 。彼は横になった 。お滝は彼の寝巻きの襟りを広げ、自分の 胸を彼の胸にぴったりと押し付け 、そうして彼を抱きしめた。 お滝は上がったようになり、わと体が震え た 。力いっぱい彼に抱きついてもその震えは 止まらず、同期が苦しいほど激しくなった 。もうよせ 。彼は顔を背けた 。お滝は彼の胸へほずりをして会いた 。たくさんだよ。 彼はおを押しのけた 。おタきは駆け布団ンを跳ね、彼の体を 青向けにすると狂ったような動作で いきなり彼の左の胸に吸いついた。 よせと彼はおきの肩を掴んだ 。おは一度唇を離し、血ばしったような目 で彼を見た がと埋めきながらまたそこへ吸いついた 。彼はお滝を押し放した 。お滝はそこへうつ伏せになり、両手で顔 を抑えた ままはと会えいた。 つった目の前に今見たものがありと浮かん でいた 。彼の左の胸 の小さな乳首の下 に長さばかりの相口の入れずがあった 。驚い たと彼が言った。初めてだ。男でもそうな のか 。おきは 恥ずかしいと顔を 背け獲を直してからコ粒の乗せてある盆を 持っ て下着のまま出ていった。 [音楽] やっぱりそう かと岸のマッサージは頷いた。俺の勘がっ た。ありがとうよ。訳け話してよ。一体 どうしたんですか ?あの基地って盗だ 。 え とお滝は息を引いた。 3年ほど前から下町の大棚ばかり狙う3人 組がいた 。2人は去年の暮れに縄にしたが、残りの 1人がどうしても捕まらなかった。その 1人が大工のセがれだということをマさじ はおきの話を聞いて思い出し、すぐに捉え てある2人と面接する手順を取った。 ちょっと暇がかかったが、ローで2人に 会い、詳しく彼のことを聞いた 。身の上も大抵合っているし、胸の 入れ済みのあることも分かった 。あ口の入れ済みなんてざにあるもんじゃ ねえとマさじは言った。間違いなしだ。 いつもので手引きを頼むぜ 。おは頷いた。 おうとマさじは言った 。しっかりしてくれ 。おめえにはいい客しいが盗すとじゃ しょうがねえ。いつかどっかでご用になる んだ。そうだろ 。マさじはキセルをはいた。今のうちなら 罪もそう重くはならねえようだ 。生地逃すと帰ってのためにならねえぜ。 お滝は頷いた 。いいわとお滝は言った。で も少し時をくださいね。 俺は飲みながら待ってる。しげるさんに 行って ください とお滝は立ち上がった。 じゃあいつもの通りね。 滝は店にいるお島にマッサージの世を聞く ように頼んで内緒へ行き、自分の荷物を 開けて財布を出した 。目が回るような気持ちだし、足が フラフラした 。余入ると彼は窓の方向いて眠っていた 。はあ、良かった 。まだ窓が開いてるのを見ておきはそう 思いながらそっと彼を寄り起こした 。彼は眠ってはいなかった。 逃げて ちょうだいとおきが支いた 。ガチガチと歯が鳴るほど体が震えた 。これを持ってとお滝は財布を出した 。あんたからもらった残りを貯めといたの 。一両部とちょっとあるはずよ 。彼は黙ってお滝を見ていた 。お願いよ 。この窓から出て兵をこすとごげ元様の カ主さんの庭えてるわ。 早く着替いをして逃げてちょうだい 。彼は静かにいいよと言った 。良かないの 。御用きが向こうに来てるのよ 。彼はうんと頷いた。 だから逃げて 、もういいんだと彼は言った 。こうなるのを待っていたんだよ 。待ってたんですって 。ああ と彼は顔を歪めた 。自分のやってることに焼けがさしたんだ 。仲間の2人も捕まったし。 この辺が念具の収め時きだと思ってた。だ から嘘を言えば言えたのに身の上話もあり のままにしたんだよ 。 じゃあとお滝は彼を見た 。私 が刺すことを知ってたの 。彼は頷いた。 はじっと彼を見守っていた がごめんなさいと言い ながら彼の枕元へ泣き寄付した 。私は悪い女だった。どんなに罪の深い ことしていたか今なった初めてわかった。 して感して ちょうだい と見えをして泣いた。 あんたは何をかも正直に言ってくれた けれど 、私は嘘ばっかりついてたわ。年だって 17なんて言っ て本当はもう27だったのよ 。いやあ、そうじゃない 。お前は17だったと彼が言った。 俺と会っている時のお前は17だっ たと彼が言った。 俺と会っている時のお前 は17だったよ 。私に は里後にやってある子供さえあるの 。今年はもう6つになるのよ 。知って いると彼は頷いた 。しかし俺にとっては同じことだ 。お前は18になっただけだよ 。子供のあることも知ってたの。知って たと彼は言った 。2度目に来た晩、前にいたお若した。 大きな声だったので大抵聞こえたんだ 。お滝は泣きながらまた見えした。 悪い人間は悪い人間だと言ったこと もそういう人間のためにどれほど泣いて いるものがあるかもしれないといったこと も聞こえ たと彼は言った。 それだけじゃない。お前自身が悪いやに 家ゆを飲まされ、親兄弟にも見放されて 子供を育てるために身を沈めたという 。子供を育てるためなら何でもするという のを聞い てまった 。本当に参ったんだよ 。彼は寝床の上に起き上がった。 この前は話さなかったが、 俺の袋 は気が狂った 。親父が首を釣ってるのを見て気が狂っ て1年ばかりして死んだ 。その間中口を開くと 俺のことばっかり言うんだ 。元はどうした?元を寝かさなければなら ない。元がまた転んだ。元 が元が 俺はそれ思い出した 。気が狂っても袋の頭の中には俺のこと しかない [音楽] 。お前は子供のためなら何でもすると叫ん だ。 俺は参った。 彼は膝を掴み、頭を垂れ 、そして素早く目を吹いた 。親父がそんな死に方をしてから 俺は世の中を悲んじまった 。真面目一方に叩き上げた親父でさえ、1 つ間違えばそんな惨目な死に方をする。 勝手に仕上がれと思っ たと彼は低い声で続けた 。だ があの番から考え直し たはっきりは言えない 。自分が嫌になっていたことも確かだろう 。これがこうとはっきっりは言えないが 、念具を納めて綺麗な体になりたくなった んだよ。 じゃあ私の ことしてくれるのね 。うん 。と彼は言った 。膝になるから霊は言わない 。さ 、そいつにそう言ってくれ。 俺がお縄を待っているるって。いや、まだ 嫌いや 。向こうでも待ってるんだろう 。こっちから合図するの。それまでは気や しないわ 。では合図をしてくれ。 ただ 嫌とお滝はかぶりを振り、ようやく 置き直って涙を吹いた 。あんた はまだ1度も 寝てくれなかった 。今夜だけは私のお願いを叶えてね 。たった1度よ。 はどうするんだ ?こうするの ?お滝はそばへ寄って彼の細へ手をかけた 。どうするってと彼が聞いた 。あなたを裸にするのとお滝が言った 。そして肝帯を廊下出すのよ。 裸では逃げ出せない か ねえ とお滝は彼へ支いた 。一緒に 1度言わね 。彼はうまづいた 。おは彼の細姫を解いた。すると突然彼 はと 叫び後ろ首を抑えて飛び上がった。 あんまり不だったのでおきもびっくりして 身をそらした 。彼は後ろ首へやった手をそっと取ってみ た 。少しし寄れた1枚の花び がその手のひについていた。 あら、拳の花じゃないのとおきが言った。 窓から散り込んだのよ。今の声何だと思っ たの ?そう言っておきは笑い出した 。彼の驚き方があんまりひどかったので ついおかしくなったのだろう。笑い出して だが、その笑い声がそのまますすり泣きに 変わった 。人間 ってお越しながらおきが言った 。人間 ってこんな時にで も笑えるのね 。彼 は手のひの花びを丸めた。 今度出てくれ ばと彼は言った 。こんなことで飛び上がるほど怯えて 暮らさなくとも良くなるんだ 。お滝 は あんたと言った 。彼は寝床え横になった 。おもしきをくるくると解き、窓の生事を 閉め、それから安の火を消した 。お顔を見てい けれど とお滝が闇の中でさくのが聞こえた 。私 恥ずかしいから。 は雨が上がっていた。 今回の朗読はいかがでしたか?それでは また次回お楽しみに [音楽] 。 パパ。
💬遊女・お滝は、岡っ引に頼まれてその手先になっていた。
男に騙されたり、幼い子供を抱えてやむをえないことだったのだが、
同じ娼婦から非難されて・・・。
岡場所の中の息吹が伝わってくるような作品。
【主な登場人物】
お滝 ------ 岡場所「吉野」の遊女。元吉に惹かれていく。24歳。
ともえ ----- 岡場所「吉野」の遊女。17歳。
お若 ------ 岡場所「吉野」の遊女。18歳。
おしま ----- 岡場所「吉野」の遊女。後に“しげる”に名前を変える。22歳。
おはま ----- 岡場所「吉野」の女主人。
元吉 ------ 元大工。お滝の馴染み客。27歳。
根岸の政次 --- 岡っ引。
【用語解説】
🌼辛夷(コブシ)
モクレン科モクレン属に属する落葉高木の1種。
早春に、葉が展開する前に他の木々に先駆けて白い大きな花をつける。
花は3枚の萼片、6枚の花弁、らせん状についた多数の雄しべ・雌しべをもつ。
多数の果実が癒合してごつごつとした集合果を形成する。
北海道、本州、九州、済州島に分布するが、観賞用として広く植栽されている。
ヤマアララギ、コブシハジカミ、タウチザクラなどの別名がある。
🏡岡場所(おかばしょ)
江戸時代、幕府公認の吉原と違って、市中に散在した非公認の遊里のこと。
吉原が表とすれば、岡場所はあくまでも裏。
📌目次
00:00:00『オープニング』
00:00:27『しおり1』
00:18:54『しおり2』
00:45:15『エンディング』
👦🏻山本周五郎(やまもと しゅうごろう, 1903年 – 1967年)
山梨県生れ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。
1926年『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。
『日本婦道記』が1943年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。
以後、亡くなる直前まで途切れなく傑作を発表し続けた。
人間に対する深い愛と洞察力で多くの読者の支持を得た。
中でも『青べか物語』は著者畢生の名作として名高い。
1920年『廣野の落日』
1926年『須磨寺附近』でデビュー。
1934年『明和絵暦』
1938年『風雲海南記(旧題:浪人時代及び武士道春秋)』
1942年『日本婦道記』
1943年『新潮記』
1946年『柳橋物語』
1948年『寝ぼけ署長』
1950年『楽天旅日記』
1951年『山彦乙女』
1951年『火の杯』
1952年『風流太平記』
1953年『栄花物語』
1953-54年,1956年『正雪記』
1954-58年『樅ノ木は残った』
1958年『赤ひげ診療譚』
1959年『天地静大』
1959年『五瓣の椿』
1959年『彦左衛門外記(旧題:ご意見番に候)』
1960年『青べか物語』
1961年『おさん』
1962年『季節のない街』
1963年『さぶ』
1963年『虚空遍歴』
1966年『ながい坂』
【関連ワード】
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【関連リスト】
🖊️山本周五郎
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🖊️藤沢周平
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🖊️柴田錬三郎
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🖊️宮本武蔵
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