【聴く時代劇 朗読】185 吉川英治「筑後川」〜我が子を捨てた母
吉川英治 作 筑後川 「裏手へ、裏手へっ」
中座者の甚太は、弾んだ息で手を後ろへ振った。 太宰府から筑紫越えを三里と十幾町、 夜半から朝にかけて一息にかけてきた根気が喘ぐ肋骨から
いっさんに汗となって流れた。 とささやき交わして、裏と横の竹林へ影を
散らしていく黒田家の捕手たちを見送って甚太は。 「今朝こそ」
「抜かるな」と袋の中のものを掴んだような 気持ちで冬木立の奥に囲まれた百姓家の表
へ木枯らしみたいにぶつかっていった。 がたっ、がたっ
強くゆってみたが、戸は開かない。 まだ暁闇である。初冬の梢に百舌鳥さえ
鳴いていないのだった。 静かなきを込めた一見のとは落葉の中に
埋まっていた。 くそたぬきを決めてやがる。
無理に実手の先をその隙間へ押し込んで グイっとねじると1枚は外へ1枚は中へ
わらっと口を開いた。 吹き込む落ँगと一緒に神タの土足は遠
踏み越えて家の中へ踊っていった。 暗い屋内は息と甘い父の蚊が漂っていた。
ロはトロトロと燃え残りの赤い日があって はてな
ちょっと勝手が違ったようにじ太は目を世 させた。
調べると言ってもたった3 破れ商児破れ畳み
台所まで1目なのだ。 いねえとついてふと足元を見ると
薄いヤグに車まってまだ22歳の若い尿房 が千さを赤子に抱えたままむっちりと白い
喉を伸ばして寝ていた。 見当たるものといえば家の中にその親子だけだった。おや、誰かに似てる。じ太はと気を取られた。若い女親の懐から自分を見ている無審な瞳にすぐにはっとして起きろと足の先に枕を蹴飛ばした。 [音楽] びっくりして女は飛び起きた。き合わせる
間もなく裸けた肩へはついを踏んできた わ地を乗せて
やい夕べここへ止まった坊主と侍あのお 尋ね物をどこへかまったわずかな金を
もらって隠し立てすると命とかけ替えだぞ 抜かせの下か天井か
女のさに抱かれていた赤ん坊がゴロゴロと 膝から布団へ転げ出したかと思うと女は
大きな瞳を見張って じ太さんといきなり彼の足を外し彼の胸へ
しがみついてきた。あ、てめは お浜か。
ピーっと畳の上で赤ん坊が火のつくように 泣くと同時に台所のと縁のと嵐のように
気外した黒竹の砦手たちがどっと乱れ込ん できた。
だがその人々も眠だれの女と赤子の前に 呆然としているジ太を眺めてや
いないぞ。 決勝は平野はと実手の槍り場を失って
キョロキョロした。 この秋9月だった。
いい大郎の司令による弾圧は反府思想の 浪人受者を全国的に引っかげていわゆる
安静護の大国は京都を戦立させた。 この直上効果運動の守望者でうまく死の
補上から逃れたのは老人狩りのたった2日 前にこれらにかかって死んだ柳川生ともう
1人は最後吉之助の力で九州へ落ち延びた 落と清水寺ラの金能
とその2人きりだった。 必要な馬も死んだ生願をメドまでは追って
いけなかったが、大阪の味側から小倉線へ 隠れた月には京都町業
小笠原長の上廃下の中の神太が後を尾行し た。 というのは目かしおか引きの中から
ズば抜けて腕の優れたものを襟り抜いて 同身下に特別な大軍を与えた密定で京都
町業だけの持つ暗黒政治のだ八うぎみたい な人間だ。
沼にも穴にも潜り込む必要な性格と ギラギラした目がもあった。
だが、なんと今朝の土地は彼らしくもない しだろう。
打財布の松屋に4日前から若い女のような 旅想が止まり込んだとは夕べ小耳に入れた
手がかり。 てっきりとすぐ黒田の手を借りて探り込む
と人足違いだった。 宿前の平の次郎が酔いに訪ねてきて、
やがてすぐ町かの虎郎と正吉地の2人を 雇ってにわかによ立ちでくメ街道へと聞い
てじ太は また出し抜かれたと大阪以来いく度か知れ
ぬ時弾だをここでも繰り返したが松屋の から
かが出る時2人は古屋の虎ゴ郎に家を聞い てそこで人休みするように支いていたと
聞き込んだので。さてはかずづいて熱を 変えたなと場所もちょうどく道の途中に
あるその虎ロの家へま向きに冬をかけてみ たのであった。 あの尿房の申し立てが本当だとすると、2
日からテンパイ山苦戦部屋と山伝にくる 伸びたものかもしれんて。
虚しく外へ出てきた黒竹の人々に白い朝は 落葉を回せた。街道にはもう2車の音がし
てたを履いた阪士が先へ行く人へ。おい 中殿。どう思う?
山 なるほど。山越え。その手は抜かっていた
かもしれねえ。 すっかりがっかりしたようだの。
お手を拝借してこっちが先に気落ちをし ちゃいすいませんが今朝かりわ。
何くるという喉がある。さんからも先へ 内れを回してあるからどっち道少し遅いか
早いかだ。 だな。売りに明るいから1つ山階を吐いて
もらえませんか?明日は川筋を洗ってくる のへ先回りをしておりやすが
で別れて1人の旅合っぱをじ太は寒そうに 波気の梅雨に打たせながら
ああ 思い出してみりゃ
これから先は俺のフル 生ま工をずらかってからちょうど4年目。
子供の頃愛を取ったち川。柿を盗んだその 柿の木。
彼には全てが思い出のものだった。 もしじ太さん。じ太さん。
わりに白い素足一心に追いかけてくる女が あった。
ズキをまとっているけれど、お浜である ことはすぐ分かった。
待ってとお浜はあいで転ぶように男の胸 すげえないじ太さんなんぼでもあんまり
じゃありませんか 話ぐらいしてくれたって
おっと待ちね 誰かと思てはお浜
今朝の姿じゃまさか今はくの茶や女前田屋 のお浜さんじゃなかろ
あんまズっぺ父なんと持ち上がって寄って くれんなとばした。わっとお浜は泣いたが
またすぐに突き飛ばされた胸へすがりつい た。
あの子はあの子は お前の差し通り
トラゴルの子に違いはないが。 え、くそ。てめのはんだガキのことなど
聞きたくもね。 私は捨ててきた。捨ててきました。
エジン太さん、 かわいそうだと思って私の体を拾って
おくんなさいよ。 舞田屋にいた頃から私は決してお前に不は
しなかった。 その女が虎ラゴ郎の子をハムた。どうした
わけだ。女を張り合って負けた男。それが ジ太だ。
らてめのために生まれた土地を売ってるん だ。
でも私はお前を嫌った覚えはない。 プラゴ郎の子を産んだことだけは言い訳が
立たないけれど、 このくメ道で原こ虎ラと言われるあの大男
力づくではどうしようもなかったんだよ けれど心は今だってあそだって
子供に父を座れながらも前の男を忘れかね て夢に見ている私だのに
ええ、うるせえ。 2度と足は踏む名と誓って売ったこの土地
。俺が姿を見せたからと言ってうに未練ん とうぶれるな。今度来たな。当てがち側
分かってます。なんで私がうの漏れて じゃあ話せ。世が開けたのにみともね。
死んだ女を拾ってやると思って5章です からどんなことでもどんな苦労でもします
から。 何言ってやんで。複水盆に蹴れずしっぱく
ぞ。話せねえと 振りほいて図金の上から横顔をピシャッと
1つ 地べへ泣きふのをかで開いて旅がっぱの袖
をパッと目をつぶって駆け出そうとしたが いや待てよと太未練が足を止めたのとお浜
が盲目的にじ太さん殺してとすがってきた のとピタッと1つ弾みだった。 さっきお浜が鳥手に申し立てた言葉もあの
人々は知らず。 神太半神半義だった。
ことによったらそこにそこが もしまた彼女の涙が本当ならば自分に嘘は
と色と仕事の両天に思い直して マり
はてめえ本気か? ぎゅっと締めつける男の腕の中にお浜の顔
はうつだった。 まつ毛を塞いでまつ毛からこぼれる涙で
返事をするだけだった。 だが今の言葉が本気た。実は俺は買ってい
ねえ。なぜといや、それほど俺を慕うなら ステルの身をかってすがる男へ嘘を知ら
せるはずはね。 言います本当のことを。
それを言おうと思って私は うん。じゃあ聞こう。中の人太が取ろうとする方の月の行方はそのゲシオさんはなぜか死人のようにお浜の唇は白っぽく震えた。あの、あのめの心を俺は試す。 [音楽] 確かに止まったにちげるめ。まあ、そいつ
はもうおつかねえが 逃げた道は山か川え トラゴ郎が味噌舟に乗せて
よく言った。 果たして自分の見通しに狂いはないのだ。
顎を味噌舟に乗り換えたなどは明らかに月 のさちを稽古していく平の次郎の地作に
違いない。よし、そこまでたりがつけば 神たの油は膨らんだ。
実手1本ス1本すろ6の際より忙しく おっつ転げし
の果てまでときた16勝負もこれでまず 思うめが出たというもの
だがお浜それだけじゃあまだてめの本心 偽りなしとは受け取れねえ
背の早いち川 酒へ回って手配をするがその飯取りにてめ
の手引きも見てものだ。 きっと私が
やるかやれるか 任しておいてください。
その代わりにじ太さん京都へ帰る時には私 を連れて
守備よくあの坊主を召し取りゃ 障害物事のつく仕事だ。きっとてめも幸せ
にしてやる。 陣たにとっては生まれ故郷。
今でこそかの尿房だが、ついこの間まで 幸運んだ後までもくの浄化ち川の水郎に
茶や女をしていたお浜と真っぴルマ肩を 並べては歩けない。
で、どうする?お浜じ さん、何も急ぐことあるよ。船でと言うと
早いようだが、くの五条家4里の川筋は どんなものでも船で乗り越しはできない。
起きて あの間だけは拾いだからその間にこっちは
どうにでも なるほど。うの生まれ故郷でも3年来ねえ
とくなる。それじゃあ慌てることはねえの 。
私は一度家へ帰って血ばかり貯めた小金だ の身につくものを肌にまとめて。
そうそう。く外れの小松原 あそこの門道で待ってますから。いや、俺
の方が先は言ってるだろう。待ってるぞい 。はい。
傘の前葉を落場の雨に薄けて根気班の細い スを中に飛ばせていく男の後ろ姿へ。お浜
はほてった目をうっりと送っていた。 原トだの鬼だのと言われるか屋の虎ゴ郎
より元から空いた神太だった。 街道稼ぎの屋の尿房で終わるのかと自分の
若さを泣き暮らしていたお浜には足かけ4 年見なかった前の男が今日の水で現れた
せいか余計にいっこく見えるのだった。 水晶の女が水に帰った時その頭には思う男
の他何者もない。 の一見屋にガタガタとフルダンスの
引き出しが鳴った。 着物も樹盤もなるべくいい方が解く。
肩にコブをこえて稼いでいる虎にねって 買わせたタバコも持っていこう。帯も熱い
方を閉めていこう。サゴの玉も2にはなら ない。
あっちこっちの子引き出しから普段くねて いた小銭にも書き集めて
とらざをおみ女を手込みにした報い 後でたんとベスを書くがいいアばよ。
お浜は出ていく家へこう言った。 ちょっと手水で薄した口紅にキの橋を加えて裏口から出ていくと、狼さんどこへだねと近所の粉な引き小屋の年寄りがそのおめかしぶりに目を見張ってから赤子が火のつくように泣いているので覗いてみると誰もいないしが大体したんだ [音楽] ああ、 お浜は忘れていた。その赤ん坊を
は返事に詰まっているとそこへなあ、 ちょうど虎ラさんの相棒の正規吉とやら人
が忘れ物を取りに来た言うて抱いていいん だが。その辺りで合わしちゃったか。あ、
そうですか。今そこでとお浜はいい加減に 返事を濁した。
そして 竹林の裏道をかの尿房らしくも見えぬもみ
の袖裏をチラチラさせて小走に行って しまった。 あんな
お上がったかっぱってことあるが船に乗っ たかきってなちょっとねえ図だぜ。
木造ガニのような削を組んでか虎は船の友 で日向っこをしながら笑った。
平船の川舟は味噌だを積んで流れていた。 樽と樽の間に女かと思うような、そして
どこか毛高かい坊さとエビさの大将に蒼発 の若い武士が膝を寄せて乗っていた。
武士は平の次郎国を見 と笑ってなるほど。船に乗ったか。そりは
手持ちぶさだろう。 少し遅いとこじれて
すぐホイホイと担いで駆け出したくなる じゃろう。次郎が言うと無口な月も
ちょっと笑った。かゴトラも交渉した。 歌でも書きつけるらしく、月勝は膝に返し
を置いて時々筆を動かしている。 白い顔へ冬指に光る川波の光の歩が絶えず
動く。 その釘のようなおっとりと平和な姿。
優しい美目のどこを探しても彼の激しい 愛国的な地の強さなどはほども見つから
ない。 準列転下の諸行を修復させている大量いい
家紋をその表のどこで しているのか
次郎と共に親しく打財布で彼に接した地前 の仙台一郎の覚え書き逐日記の記述によれ
ば 清掃は流日美
生護少なくただ眼中木 上をたを好み、また若を楽しむ。
人の心もかれまどかにて散りも曇らぬ秋の 世の月の歌自ら彼の姿をなすも惜しむ
べし運 1日も小月を追わざるの日なし おい相棒
味噌舟をこっちがしつけてれ 丘で怒鳴っているものがあった。忘れ物を
取りに引き返した虎ラゴ郎の棒組正吉地 だった。おお、成功か。早かったな。
先道に手を貸して船を寄せると のい立てんだ。船には負けねえ
と船へ飛び込んだが、虎ラは彼が泣いて いる自分の子にびっくりして。やい成功。
てめえ家から持ってくるものをとってきや しねえか。
何?5番種の手型ちゃんとここへ持ってき たと木札を見せて赤かん坊はかわいそうで
おいちゃ来られねえから連れてきたんだ。 バカ。血み号仕事先へ連れてくるま抜けが
あるか。余計なお切を焼きやがって。お 切かもしれねえがこの寒いのに畳の上Cに
濡れたまま放り出されていちゃなんぼ何で も小声しんでしまうだろうぜ。お浜は
癒しね。どこへ行ったか。 うん。
兄貴だから友達が言わねえことじゃねえぜ 。あんな水しの女は
尿房には踏き。いい加減に目を覚ませよ。 うるせえよ。こっちへ出せとドラゴ郎は
赤ゴを引きたくて 成功みや
笑ってやがる。 が父に困るな。味噌でもしゃぶらせておけ
。 何期もほど
こんな子置いてお浜にお母はどこへ行った んだろう。
きっと心類に取り込み事があるからとは 尿房を構うように呟いた。
あ、ごみんな 赤子に気を取られている間に味噌舟はいつ
かくめ口の船改めの石垣きへズーンと ぶつかって人々はあっとよろけた。 便乗しておるものは誰か?
反の役人が石垣きから覗き込んで質問する 。
の次郎が立ってこれは落第5院のご門より 鹿児島の主元層日高村留院へ使わされるご
思想にござりまする 拙車は防寒石田四部と淀みなく言った
怪しい そう直感したらしい阪たちの目だった
しかしくめとしては特にいい大郎の司令に 媚びのでなければ気づかないことにして
通した方がうるさくない。 京都から追跡している中者だの小倉の目証
だの黒田の鳥手などそういう無数の勢力が こんがっている上にさの息もかかっている
しこの絵たの真金でもある月勝をここで あげるとなると反の立場は非常に面倒な
ことになる。 大地ついている武士がただは渡す前しそれ
も尋常な人物であるまいと思ったので 採用でござるか。しかし東半の置き手とし
ていかなる基人にせよジ下4里の川筋は 先行を禁じてあるが
承知いたしております。 か内は広いのつもり。ならばとらっしゃい
。 ほっと月しと顔を見合わせて
虎ラかの支度と言った。 トラゴ郎はこう背中へ紐で十文字におぶっ
ていた。 からかを丘にあげを乗せて後ろ棒を担いだ
。 はひたっとそのかきに ジ下へ入ると町の人々が
原こがげコラがと後ろを指刺して笑った。 赤ん坊が泣き出したので虎ラは雨を買って
持たせた。次郎はまた 11
話寄ってくれと秘ドヤへ回って手紙を受け取り、それを店先で読んでかの中の月晶へ渡した。手紙は馬の最後之助からである。国馬へよそ者物を入れることは実に難しい。 で、反の領と月の安全の地を売るために彼
は先へ帰って本送中だった。 お分かりでございましたか?
次郎は手紙を手に戻してすぐ店先で焼いて しまった。そして急に
から、また少々都合が変わったと何かさい て11から急がせた。
人足違いにその店へ飛び込んできたのは中者の太だった。どに焼き捨ててある踏柄の牌にやしまった。 肺の字を読むように顔をくっつけていたが ええしょうがねえ
と付けて超えへえ。 今の手紙はさび客か。さようで。うーん。
最後目だな。いやあ、違いまするが。名は 当てにゃならねえ。ところでか護はどっち
へ?その街道をすぐ曲がったようでござい ますから柳川の方かと存じますが。え、
柳川へ とするとこいつはちっと当てが違うぞ。
泡を食って駆け出すと町の辻でドンと肩を 恋いにしかも人太の道中しを不に掴んだ
先動の男がある。 こう珍しいじゃねえか。あ、誰かと思っ
たら 電助。久しぶりだが急ぐところ後でまた。
おっと待ちね。いくら急ぐか知らねえが フルKってこちとら仲間にぶつかり
りっぱなしという方はあるめ。すまねえ。 すまねえが今は
おめのお袋は死んだぜ。中部の親父は先動 仕事もできねえんで仲間のもらいがで生き
てるんだ。知ってるか、てめえ。 そう、そうかい。
そうかいもねえもんだ。 きめは京都で中者とかいう目の頭株に出世
したそうだが生まれ故郷だってそう忘れた もんでもある。
はあ、読めたと電助は頷いて は今向こうへ行った原固のかをつけていく
んじゃねえか。え、よく知ってるな。虎ラ の様子が変だった。それに赤ん坊しって
言いやがるし、ついてる侍もただ物じゃ。 電こ、
俺に人肌脱がねえかな。なんでいきなり人 に金なんを握らせやがって。いや、これ
古番しと道端から路ジへ引っ張り込んで、 実はこのかの白物はこの神社の出世仕事。
またそいつがうまく生まれ故郷をわじにした色の遺も張らせるということになるんだ。ふ、なるほど。俺はかをつけていかざならね。ところが法学地の小松原に実はお浜が待っている。 え、原こ虎虎のが
ありゃ虎に腕づくでこう生ませられた因果 の
元は恥ずかしいが各ゆ太の女だろうじゃ ねえか。 話は分かった。
じゃあそのお浜に知らせてどこへ行く? 本学は柳川だが先の検討は風次第。
こうしてくんね。 のおめの船小屋へでも。
よし、預かっておこう。 柳川班に手ずがある。
最後吉之助の手紙はそこの範囲岡倉ウキの 手にも届いていた。
防名月勝のさ入りに何より困っていたのは 船と入国切っ手だった。
船は右教の行為で手に入った。 小ぼから密かに乗って白縫いのあり明け型
からさに渡る予定。 切っ手はうまく手に入らないので止を得ず
に偽造。 その4日ばかり嵐だった。5日目も雨が
止まない。 とてもこの海のあれではと右教は引き止め
てくれたが、元々カ中にも反種にも内密の 行為である。もし漏れたら恩をあだれと
いうことにもなるし、月の身も破滅だと 考えて平野は
帰ってそれがいい機会とこっそりラザ財布 以来雇い同士の虎ラゴ郎と正吉地に支度を
させて出かけることになった。 この名古屋は打財富の松屋の主人がただの
雲之助では密国する恐れがあるとその実直 とぎを見込んでいよいよさ磨線へお移りに
なるまでは決して道中の炙れかなどとお 取り替えにならぬようにと念をしてつけて
くれた男だった。 旦那かの支度ができたぜ。
空ゴ郎は赤ん坊を背中に処い込んで行きず を持った。
雨はいくらか小闇みになってきたが、まだ 風はかなり強い。で、赤子の頭から油を
被せて、その油紙が飛ばないように、また 紐をかけている図はおかしかった。
一生はかに乗る時、母はどうなされたのと 虎ラに訪ねた。虎ラはただにやりと笑う
だけだった。 疾風と小雨メの酔いをついてかごは走った
。 顎が岡倉右教の裏門から出ると張り込んで
いた中者の神太 さてはこんやと満身の地に雨を弾いてつけ
た。 ここが土タ場だ。ち後川の川尻からさ磨線
が友綱を切ったらもういかに素の長い中者 でもちょっと手が伸びがい。 は張り切った胸に大きな爆地に望んでる
ような興奮を持った。なぜなら黒竹から 借りた鳥手は他の両地へ入る手続きに
戸惑っているのか。それとも岩田に山越の 峠を探索しているのか。とにかく今夜の間
には合わないと言って柳川にもくるにも 黒竹の女性を受けておいてまたそれを頼む
わけにもゆかない。 1人だ。腕1本中の人の男をあげるか
下げるかである。 だが大浜のやつをうまく使えばと頼みは
それ1つだった。 くみの近くまで来ると彼たへ走っていく
先望の正吉が大声で 兄い
安倍だぜ。月が出た。月がよと怒鳴った。 ひょいっと青となるほど。日メカで破れた
濃いく間から嵐に磨き抜かれた冬の月が まるで睨むように顔を出していた。
ジ太はひょいっとくみの漁村へそれ。 そこの一見を叩いて
おい 、連光俺だ。おお、じたか。ガラっと開け
て 来ているぜ。
お約束のレコと小指で奥をさした。 すぐ俺と一緒に来てもらいて。
まさかと思っていたらこのあれに小ぼ裏 から出かけるらしい。ここで逃しちゃ
100年目。もし祝した日にゃ陣フで京都 へは消えられねえ。
彼ゆえにこの4日か5日の嵐を待ちがれて いたお浜はこいする娘のように奥から
走り出してきた。 じたさん。お
電はピシャッと遠しめて かこご両人。ほら独り物だぜ。
こいつはすまなかった。ところで手配は 弱ってるなあ。その黒田の人数が間に合わ
ねえ。 頼むな。この実手1本とおめたち2人。
何かうめえシ案はねえかしら。 シ案といや、ほらの七蔵の台で今夜のさ磨
線に先道を頼み込まれてるんだが。こっち の方がうめえ金儲けになりそうだから断っ
ちまった。 え?さマ線の先道に頼まれたと。そいつは
惜しい。なんだって断ってしまったんだ なあ。いや、行こうと思何も1人や2人の
人間は割り込めねえことはねが 是非頼む。俺もその仲間へ
とじ太は熱心にそして声を含めて おめえ先動を着せて連れてってくれ。え、
のる気か な?鳥物の方便。ちょっくら変わって
見せるから。お浜、そこにかかっている 水着を取ってくれ。
お浜の鏡を借りて神太顔を変えた。そして 水着をする。放かぶりをする。
な、なるほど。わからねえ。 何かひそひそし合わせをした上、小浜は先
に1人で裏口から表太 とは水着姿に貝を抱え込んでやがて
月光の中へ飛び出した。 雨の後、
ち川は凄まじい幅を持って本流を上げて いる。
海はなおひどいあれである。 川口は渋きとしとが戦って教乱を巻いてい
た。そして 月光の死や全てが濡れている。光っている
。 無理だ。
命は捨て物だ。 10人ばかりの先道は木年と腕組をして
おきを見ていた。 中に平次郎が刀のこじりをついて
なんのこれ好きな波押し切れぬことは あるまい。出せ出せ
だって旦那お姉さん方だって命を捨てちゃ 何にもなるべ。いやせ
。無理だ。 次郎は海屋の立ちをパッと開いて己れというか塚を打ってどなるとあ次郎 とシオが銅のままで袖をあげた。こう背負って騎士に見送っていたこと虎はのそのそ板を渡って船の上に上がってきた。 そして
なんだ?やい先。何をしってやがるんだ? 先道は驚いた。次郎の刀よりも彼の油の下
に逃げられている現稿に恐怖の目を向けて 。お郎か。
おら、か屋だが山があれだと言ってかを 出すの出さねえのとしぶったことはね。
てめちゃ海で飯を食らいやがってこんな波 が怖いのか。
いくら兄貴だってか屋に海の公爵は 分かる目。この死刑ほるなむちゃだ。水逆
をせざならねえ。 するがいい。商売で死ぬな。本だろ。
嫌ならどけ。 せ。上がってこい。か屋だってこ
れっぱ菓しの船が動かさねえことある。 平野の旦那家事を頼ますぜ。
おおかごらさまで行くか。 行きましょう。お国のために。天使様の
ために。 の体の浮場のね、お坊さんと聞いちゃ売っ
ちゃってはおかれねえ。 か屋でさえもサ度の飯と寝床だけはある
もの。 虎ラの声に目を覚まして背中の子は
泣き叫んだ。それをよちよちと怪しながら やい先祖
何をまぐまぐしてやがんで邪魔だ。1匹 残らず岡へ降りろ。
ほみへ楽かのような両腕を伸ばして キリキリと絞りかけた。
ほ車が叫ぶ。背中の子が泣く。 兄貴、俺がやる。あかん坊下ろしてやりね
。 かごとせくことはない。子供を子供をと平
の次郎も見かねていった。 虎ラの着替いに打たれて働き出す先動も
あった。降りる先動もあった。 虎ラはラカのような体を銃に揺りながら
泣くな、泣くな。とさんの背中が気に入ら ねえのか。お腹が減ったか。辛抱してくれ
。の辛抱を との間をあっちこっちと歩いている姿に月
はほろりと目を熱くして 虎ラとやらこれをやのおもちゃに
もったいねえ 虎ラは水晶の術を手の上に見つめて
じゃあ借りておこう やい坊やてめは過ほ家
の月勝様がおじをお貸しくださった。 ほらほらほら水晶は綺麗だなあ。
てめも大きくなったら現し様にあかれよ。 か屋になるな。
臆病な先動になるな。てめのお袋みてえな 白者に。あ、やめよう。未だな。てめも男
。俺も男。 わっと河の枯れ草の中で泣くがしていた。
川取りではない。手ぬいがおいている。 女の影である。
赤子は泣く。 虫が知らせてか声をかららして泣く。 お浜は父がいっぱいに張ってそれが血と
なって口から吐くかのように苦しんだ。 もがき回った。
後ろの物影には仕切りと しやいう何をと苛立ち抜いている色のジタ
をも感じながらどうにもならない自分をっ た。
若い母として持つ2つの本能に乱れつつ混 した。
ジ太は小影で自段打を踏んだ。バカたけた 。あらゆるバリを心で女に浴びせかけた。 が腕っぷしの強い原固と平の次郎を騙して
船から遠く誘い出した隙に月勝へ縄をかけ てすぐ打財布まで差し立てる早か後まで
そこには用意してきてあるのに 保宅はできるもう一瞬だ
気がきではない ジ太は唇は破れて強出し
だが平野がそばにいるうちはあの原こ虎 虎ラがいるうちは命と取り替えなら
とにかく手が出せない。お浜のせい恋石を 投げて
早く早くやいお浜今だぞてめの生涯の運の 決めどこ
2人の幸せを掴むのは今だ。早くそれ お浜はふらっと立ち上がって河の波打ち際
へ近づいていった。 坊や、
坊や。 橋板を渡ろうとしたが渡れなかった。そこ
によめえて 父が欲しかろ。どんなに私は探したろう。
うちの人、お前さん、父を坊やに 虎ラは棒みたいに立っていた。お浜はその
怖い目を見上げられなかった。目を背け ながら心を心で居腹のように作りながら
必死に それからあの
平野様に会いたいとおっしゃる方が来て いらっしゃいます。
いえ、お忍びのおけ様でついそこの岡倉右教き様とご一緒に。 あ、岡倉様がお見送りに次郎が何気なく降りようとすると行けねと首を振って虎ラが墓を掴んだ。だ、様子が変だ。 足が背踏みをしてと渡り板を超えてわま嘘じゃあ歩めな。 いえ、あの平野様も それにゃ及ばねえさ、どこにと腕を掴んでを引きずるとおはブルっと骨を振わせて真っさに死人のようにそして息も瞳も足も乱れてしまってこっちこっち どっち
ごこお、こっち。よろと心 は2つを迷って
虎ラは現稿を固めながら一歩一歩おって さあどこまで
半長ほど河を離れたと思うとお浜は いきなりトラゴ郎の肩へ狂ったように
飛びついて坊やすまない まあ
途端にトラゴ郎の言語がビュッとお浜の顔 をかめた。当たったらその頭もほぼ骨も
バラバラに砕けてしまいそうな力だった。 はっと打たれたように感じた顔をお浜は
ヒーっと叫びながら両手で抱えて青向けに 倒れた。
して虎ラさん私が私が悪かった。 坊やに父をやりたい。坊やに父をやらして
もれた下で早口に涙か声かけじめもなく彼 の足元へ吐い。そして叫んだ。
父をやらして。父をやらして。 振り上げた2度目の現稿を虎ラゴ郎は胸の
紐に解いてくるりと背中の赤子を前に回す とちちくしょ。うめえこと言がる。こいつ
がなけりゃのをつけてじにくれてやるてめ だが。ちくしょ。勝手に分別しやがれ。
紐ぐるみ。こうお浜の膝へ放り与えた時、 虎はあっと振り向いた。
女、女心目。すぐ近い小影で先動亭の男が 怒鳴ったと思う間に手を上げて介
、その編みをぶった切れ。破れかぶれだ。 月勝ご用。
まるでまみたいに早かった。船へ向かって 駆け出すが早いか磨きの実手を口に噛んで
決勝中の人が取ったと船へ踊り上がった。 同時に中に残った先道のうちに紛れ込んで
いたの電助が脇差しを抜いて雲に張りほみ をバラバラに切りかけた。
この霊 平の次郎の刃が月を終わってそれへ飛躍した時太は月晶の方へ手で一撃をくれてガバッと組み伏せただく間もなく太は太い腕に襟り紙を掴まれろ聞いたと思うとは下に見 中を回り、河にドスっと腰をついた。
夢中で立った時、彼は目の前に山みたいな 虎郎の姿を見た。
ガッと自分の吐いた真っ黒な血をじ太は見 ながら前へ2足ほど歩いた。
耳が血の塊になって、その顔は月の下に ひべったく横になっていた。
平の次郎は茅ヶのを船りから下へ切って 出すの出さぬのと先道どをそかしていたや
は電助であった。これで苦情もない様子。 もう良いよい。虎頃
サラバ。 船は揺ぎ出していた。
に広げた方に風は鳴る。風は誘う。 逐川から有明けの海へ。
ああ、旦那、お坊さん。お達しに。 トラゴ郎はのっそりと相変わらずのっそり
と立って見送っていた。 どこかでちゅっちゅっと夢中になって母心
の乳首を吸う音をぼんやり意識しながら [音楽] [音楽]
【作品紹介】
吉川英治氏が41歳の時執筆。
安政の大獄時、勅諚降下運動の首謀者月照を追う、中座者の甚太。
その甚太を追いかける、人妻お浜。赤ん坊の我が子を家に置きざりにして、前の男甚太へ「子は捨てて来た」と言う。
結末までお聴きくださいね、赤ん坊の行く末が分かります。
初出/「オール讀物」昭和8年1月
★もし漢字の読み間違い等が見つかりました時は、私からすぐ概要欄にてご報告いたします。😊
★聴いてくださり、心より感謝申し上げます。ありがとうございます!
★主な登場人物
甚太・・・京都町奉行の中座者で、月照、平野を追う。
伝助・・・船頭で甚太を助ける。
お浜・・・今は虎五郎の女房だが4年前に付き合っていた甚太が忘れられず、赤ん坊の我が子を家に置きざりにして甚太を追う。
虎五郎・・・駕かきで、お浜の旦那。勢吉と共に、平野に雇われる。
勢吉・・・同じく駕かき。
月照(げっしょう)・・・(1813-1858)実在した。安政の大獄時、勅諚降下運動の首謀者で洛東清水寺の勤王僧。
平野二郎国臣・・・(1828-1864)実在した。月照を助ける攘夷派の武士。
★用語集
筑後川・・・熊本県阿蘇郡瀬の本高原から発し、筑紫平野を貫流し、有明海に注ぐ。
中座者・・・目明かし、岡っ引きの中からずば抜けて腕の優れた者を選り抜いて、同心下に特別な待遇を与えた密偵。京都奉行だけが持つ。
ひろい・・・徒歩。
水杯(みずさかずき)・・・二度と会えないかもしれない別れの時などに、お互いに杯に水を入れて飲み交わすこと。
☆時代小説 短編 おすすめ
#吉川英治
#朗読
#女性朗読
#時代小説
#文学
#小説
#短編
#名作
#おすすめ
#ラジオドラマ
1 Comment
おはようございます、有難うこれから拝聴とします🤗