「井上尚弥は効いていたと思う。でも…」長谷川穂積がカルデナス戦3つの「なぜ」を読み解く! いつもと違っていた井上の“ディフェンス”
5月4日、日本時間5日、ミラスベガスの Tモバイルアリーナで行われた井上弥大橋 の世界タイトルマッチについて様々な意見 が溢れている。復兵ラモンカルデナスコメ を相手に井上はなぜダウンをきしてしまっ たのか、なぜあのような戦い方をしたのか 、なぜカルデナスは井上を苦しめることが できたのか。なぜを解くべく元級制覇の 長谷川ずさんに聞いた。全2回の1回目、 続きを読む2階級で4団体統一を果たした 井上に無名のカルデナスが挑んだという 試合。圧倒的有利を伝えられた井上は会長 にスタートを切ったように見えた。長谷川 さんは倒しに行っているなという目で井上 を見つめていた。自分に期待されている ものが分かっていた。ガスベガスで自分が 求められているもの、期待されているもの が分かっていたので自然と気合いも入った んでしょう。前1月のキ戦1ラウンド目は ほとんど手を出しませんでしたけど、今回 はガンガン行ってましたね。完全に倒しに 行ってるなと感じました。井上は2回も 続けてアグレッシブなボクシングを展開し た。そこであのダウンだ。1年前のルイス 練り戦で切したダウンにダメージがあり そうに見え、モニターの前で凍りついた ファンがどれほどいたことだろう。自分が 攻めていったところで正面衝突のように もらいましたから聞いたと思います。 もらった理由は色々あるでしょうけど、 やっぱりせめて行ってますから。それで隙 ができたということだと思います。井上と 家も攻める瞬間は脇が開く。攻めなければ 勝てないのがボクシングだし。攻めたら隙 ができるのがボクシングだ。井上といえど も攻める瞬間は隙ができる。例えば強い ミニストレートを打とうとしたら教科書 通りグローブを顎の位置に置いてそこから 打つという風にはならないんです。全力で 打とうとしたら振りかぶる。グローブは顎 よりも下胸源くらいから打つし逆の手の ガードも脇が開く。人間の構造的に グローブをがっつり顎につけて脇を閉めて というのは無理なんです。そこを カルデナスが狙ったのかどうかは分かり ません。井上選手はこれが3度目のピンチ でしたけど、ドネ屋の時もネリの時も同じ ようなもらい方でした。井上は打たれ強く はない。でも2019年11月のドネア戦 でガ定骨折した一撃24年5月のルイス 練り戦で切たダウンはいずれも相手の左 フックによるものだった。ダウンの後の 戦いぶりも興味深かった。井上は3回も ためらわず攻めていった。井上選手は打た れ強くはないと思うんです。ダウンします からでも回復力がすごい。そして ポジショニングのうまさであったり、 組み立てのうまさだったり同じパンチを 2度ともらわない。そこがすごい。あの3 ラウンド普通だったら警戒してちょっと 様子見るんですよ。それが井上選手は警戒 しながらも強打をどんどん打ち込んでいっ た。ハートの強さ井上選手のすごいところ です。いつもの井上とディフェンスが違っ ていたわけ。井上はこの試合一貫して攻撃 的な姿勢を崩さなかった。そういう ボクシングを選択したことでディフェンス 面でいつもと違いがあった。これまでは バックステップで相手のパンチを外す。 触らせないディフェンスをすることが 多かったですけど、今回はブロックが メインでした。打ち合えば必然的にそう なります。これも倒さなくちゃいけない。 いい試合をしなくちゃいけない。打ち合わ なくちゃいけないという気持ちがあった からだと思います。現地では公開練習に 体制のファンが詰めかけ、アメリカの メディアからは連日のように取材を受けた 。ラスベガスでモンスターの実力を証明し なければならない。そうした指命感が パフォーマンスに直結したカルデナスへの 評価は井上はダウン以降全てのラウンドを 抑えて試合を進めた。それでもカルデナス のカウンターは鋭く。日本のファンは ハラハラしながら試合を見つめていたこと だろう。長谷川さんの目にカルデナスは どう映ったのだろうか。ガードをがっちり 固めて構えたところからノーモーションで ジャブを打てる選手でした。いい タイミングのジャブを持っていて何より 想像以上にパンチがあって切れもありまし た。終わりを狙って思いきり振ってきまし たけど、空振りを見てもこれをもらったら 危ないなというパンチでした。井上の パフォーマンスにも目を見張るものがあっ たという。ダウン以降井上選手はジャブの 数と的確性で流れを引き寄せました。 そして相手が打ち終わりを狙っていると 分かった上で攻めていくところがすごい。 私も最初に試合を見た時はかなりハラハラ しながら見たんです。でも何回も繰り返し て細かく見ていくと井上選手のすごさが よくわかりました。カルデナスが井上の パンチに慣れた。6回に井上に攻め立て られたカルデナスは7回に反撃した。前に 出て井上にロープを背負わせた。この場面 も長谷川さんの印象に残った。井上選手の パンチにも慣れたんでしょうね。Lジガー ドっぽくして左肩をうまく使い頭を右や左 に持っていって井上選手を下がらせました 。両ガードを上げていると肩が使いにくい けどL字だと肩が動かしやすい。フロイド メイウェザーが得意でした。そうやって 井上選手にロープを背負わせてそこから 攻撃を仕掛けた。左ボディを浴びた井上 選手がちょっと効いたように見えました。 嫌がっただけかもしれないですけど、 あそこから倒すとはやや交代仕掛けた井上 だが、ここから再び構成に展じ、ついに カルデナスをキャンバスに突き落とす。T モバイルアリーナが爆発したように湧いた シーンだ。長谷川さんもこれにはあそこ から倒しましたからね。すごすぎますよと 脱望するしかなかった。井上が8回に ラッシュしたところで主身が試合を止めた 。後編では楽勝と見られた試合が熱戦に なった理由をもう少し掘り下げ、井上の 今後の課題にも触れていきたい。