麻里ちゃんに会いたい 作:内海隆一郎/朗読:新橋智美

[音楽] 宇竜一郎 まりちゃんに会いたい その客が訪ねてくるたびに中田さんは憂鬱 な気分に陥ってしまう 内心が顔にまで現れてどうしても不な表情 で仕事を続けることになる だが客の方は気にする様子もなくにやかに 挨拶をし てまりちゃんいます かといつも真っ先に聞く この3年の間34ヶ月に1度は決まって 中田さんの娘に会いに来る まるで恋人を尋ねてでも来たようにいそし ている ところがその客は中田さんと同年の50 半ばで白髪尻りの紳士 娘のマリは中学1年生なのだ まあいらっしゃいませ 中田さんの奥さんが顔を出して丁に挨拶を する 夫の顔色などお構いなしに僕へと生じ入れてあなたにしましょうと中田さんにも声をかけるいいじゃないのせっかく尋ねていらしたんだから歓迎してあげましょうよ奥さんの顔がそう告げている ああ そうするか 中田さんはハげた頭を撫であげて 立ち上がる しかし一緒にお茶を飲んでいてもこちら から話すことは何もないむしろ口を開くの も鬱陶しい 田さんは長野県の習いという村で土産屋を 営んでいる その昔真塾やつと並んで旧中道の宿場の1 つだったところである 当時は名古屋方面から来る旅人は鳥井峠を 超えて習井塾へ入ったそうだが今ではJR 中央本線の電車国道19号をマイカーで やってくる そのほとんどが旧道の不勢を楽しみに 訪れる観光客だ 中田さんの店で扱っている土産物は全てが 本人の手作り製品である 市形のおひな 様をかった 動物おぎ話の主人公 たち塾の民家を密に表した オルゴール名物のそば作りをユーモラスに 演じるから空クリザイク工の猿 などいずれも他の土産屋のものと違ってい て観光客の珍しがる品かり 中田さんは離れの作業場にいることが多い が時々店先で仕事をしながら観光客たちと 話を交わすこともある これどのように動かすんですか ああそれね手前の棒を引っ張ってごなさい ほらね 白が棒を引いてわっと完成を上げる 気づりの小さな猿がいきなり動き出して手 にした箸でそばを掲げ同時に大口を開けて 上を合うというからくりになっている 面白いわねこれってご主人が考えて作るん ですかそうこの猿に似てるでしょ 客たちとそんなやり取りをするのが中田 さんの楽しみでもある その負妻もそうした観光客の1組で名古屋 から孫塾つご塾と車で回ってきたという ことだった 奥さんは汗が高く痩せだが美しい人だった 少し見えるのは旅行の疲れが出ているため だろうと中田さんは思った しかしいかにも楽しそうな不勢だったので 幸せな夫婦だなという印象を抱いた さが娘のマリに出会ったのはその時である 小学校から帰ってきたマリが客の来ている 時はいつもするよう にいらっしゃいませと一言言って餌釈した 根元に美償を浮かべたマリオ見て まあ可愛いことまるでおひな様のようなお顔してるわねと奥さんがためきまじりにいマリの背たにまで腰を鏡めてしばらく顔を見つめたマリの方はくすぐったに立ち尽くした [音楽] ねえお名前は今何年生かしら 奥さんが妙に熱心な聞き方をした マリはしたお持ちで答えていた そうまりちゃんっていうのいい子ね一緒に お写真を撮らせてちょうだいな 店先で小さな体を抱き抱えるようにして いる姿を夫が写真に撮った 初めて会ったよその子をこれほどまでに 可愛がるのも後で考えてみれば奇妙だった マリが店と続きの家へ入った後土産物を 選びながら30分ほど過ごしていたが まり ちゃん さようならと奥へ声をかけてから 名乗り惜しそうに立ち去った 負妻が買い求めたのは土人形の帯びな目 だった 半年後その客は再びやってきた その間にも中田さんは大勢の観光客と接し ていたがあの時の客だとすぐに思い出す ことができた マリに対する奥さんの様子が印象深かった からである ただし今度は夫婦連れではなかった 内は1ヶ月前にいなくなりましたと客は 言った 胃が眼にやられましてこな間だお邪魔した 時はすでに嫁わずかと宣告されておりまし てね 実はあれが最後の旅行だったのですよ 店先で話しているうちに客が涙を浮かべた ので気のどに思って奥へ招き入れた 中田さんの妻がお茶を入れて一緒に客の話 を聞くことになった 内自身もそのことを悟っていたようですだ からあの旅行は特別なものでした としては見るもの聞くものの全てに生きて いるという実感を呼び起こされたの でしょう 旅行の間中いろんなことに感動してばかり いまして オタクのまりちゃんにお会いした時は特に そうでし たと客は懐かしそうに微笑んだ 旅行から帰った後いつもまりちゃんのこと を話しておりました 可愛い子だったわあんな子がそばにいて くれたらねとそればかりでした うちでは女の子に恵まれなかったせいも あるんでしょうが 話を聞いているうちに中田さんは胸に 込み上げてくるものを感じた 通りであの時奥さんは名残りを閉む様子を していたのだ 2度と尋ねてくることのできないことを 自分でも知っていたのだろう 入院してベッドから起き上がれなくなって からもここで撮った写真と記念に求めた 日人形をサイドテーブルの上に飾っていて いつもまりちゃんのことを思い出している ようでした たった1度お会いしただけなの にまりちゃんに会いたいと仕切りに言い ましてね 本人が聞いたらどういう顔をするだろうと 中田さんは思った おそらくあの時のおばさんのことなど とっくに忘れてしまったに違いない いよいよ最後の時意識がなくなったはずの か内が何か呟いているので耳を寄せてみる とまりちゃんに会いたいと聞こえました 病人が思い描いていたのはもしかすると 本人の少女時代の姿だったのかもしれない と中田さんは思った まりちゃんに会いたいという言葉は 若かしく未来に夢を抱いていた頃の自分 自身に戻りたいという願望だったのでは ないか 亡くなった後ほ答るごとにか内の言葉を 思い出しましてね そのうち私もまりちゃんにお会いしたく なってお尋ねしたわけ ですと客は微んだ 1目お会いしてに報告したいと思うんです が まだ学校からお帰りになっていないよう ですね はい 放課後にクラブ活動があるんでねでももうそろそろ帰ってきますよ田さんが答えた マリにあって慰められるものなら是非そうしてもらいたいそれは奥さんへの苦にもなるだろうやがてマリが帰宅くしていつものように挨拶をした 客はじっと見守っていたがいきなり両手を 差し伸べてランドセルを背負っている肩を 抱こうとした マリは驚いて後ずった あごめんなさいおじさんも覚えていないか ねほらうちのおばさんと写真を撮った でしょう 楽は言いったがマリの方は戸惑ったように 表情を固くしていた そっか私の方はいつも写真を見ていたから 親しみも懐かしさもいっぱいだけれどまり ちゃんにとっては一度あった霧りの知ら ないおじさんだものね と客は寂しそうに笑った はようやく意味を悟ったらしく決まり悪そうに親の背後に回ったお前半年前のこと覚えてるか 中田さんが聞くと曖昧に首をかしげた相手の気持ちを思いやる子だから無限に忘れたとは言いづらいのだろう 客はそんなマリの様子を見つめていたがこ 1時間ほどして糸間を告げた また是非とも伺わせてください ワりちゃんお元気でね いつかの奥さんのように名残りしそうな 様子を見せながら帰って行った さんは妻と顔を見合わせてほっとと吐息気 をついた に先立たれた相手が哀れだったのは確かだ がなんとなく割りきれない思いもしていた それから3年経つがその客はすでに十度に 渡って尋ねてきている では奥さんの亡くなったことに同場するよりもやれやれまた来たかという思いの方が大きいとにかく来るたびに亡くなったか内がね [音楽] 客が話すことはいつも同じであるそれが中田さんには鬱陶しくやりきれない 相手とは親しい間柄というわけでなくその 防災とも生前に客の1人として1度だけ あったに過ぎないのに 亡くなる直前 までに会いたいと仕切りに言いまして ねと客は目をうるませるの だところが中田さんが腹しく思っているに も関わらず祭祀の方は少しずつ客に親しみ を抱くようになっていた その後奥さんの亡くなった経緯を知った マリはも同場的 でおじさん てかわいそうな人なの ねなどとしみじみと いうおばさんももっともっと長い気をして いたらきっと仲良しになっていたの に中学生になってから少女らしい鑑賞が 講じてきたためか防災の話ばかりする客に 涙を見せたりしている 博多さんには面白くなくます腹が立って くる 一体どういうつもりなんだ奥さんが会い たいと言い続けていたからと言ってあいつ までがマリに執着することはないじゃない か しかしそういうことを口にすると祭祀から 避難の目を向けられるに決まっているだ からせめて不機嫌な表情をあさにして 黙りくっている他はない やあこんにちはまた来ましたよ 今年も1月の半ばになってその客がやって きた 前のように奥を覗き込ん でまりちゃんはいますかと親しげに声を あげた ユ場は換気が厳しく観光客も少ないので店 のは閉めてある 中田さんは総春のシーズンに向けて日飾り などを作る他はホつで日が1日読書を 楽しんでいる こうして予告なく訪れる客にはほと我慢が ならなくて知らん顔をしていた まああけましておめでとうございます 妻がにやかに迎えに出た 冬休み中のマリもいぞいそ出ていった 今日はね息子を連れてきたんですよ 晴れやかな声で告げ客は表へ向かって名を 呼んだ それまで息子のことをほとんど聞いたこと がなかった 中田さんがこたつ越しに顔をあげてみると 母親にらしい超心の青年が入ってきた 父親がぎ気味に紹介すると育ちのいい若者 らしくきちんと頭を下げた 息子は大学1年生ですからまりちゃんとは 6つ違いですよね 意味ありげに父親が指を追って見せた おやと中田さんは思った それは一体どういう意味なんだ これからは息子も一緒にちょくちょくお 邪魔しますのでどうぞよろしく 楽しげに話す客を中田さんの妻は賑にしく 今へ向かいた 中田さんはむっつりとこたつを出てその まま作業場へと立っていった 自分でもそれと分かるほど険しい顔付きを していた なんだと言うんだ まさかマリオにくれと言い出すんじゃなかろうな 火の毛のない作業場に入って石油ストーブに転下した座布トンの上に座って作りかけのひ人形を取り上げた形を整えて素やきした土 人形にのりを塗りエフで花と衣装を最食する しかし前日のままにしてあった絵具が皿の 中で凍りついていた いくらなんでもアーマーで愛そうよく 出迎えることはないだろうに 皿をストーブの上にかしながら不き機嫌 そうに眉を寄せた あんなやにいつまでも同場して付き合う ことはないんだ 絵の具が溶けたので 筆を取って名を手にした形に目を描く時は心を沈めてからなければならないちょっとした気持ちの動きが形の表情に出てまうき上げて思ったビナの目立たちはマリに似ている 作業場の棚へ目をやるとこれまで作ったひ 人形が並んでいた その全てがどことなく娘のおざしに似って いる 悪った奥さんはひな人形を病床のそばに 飾っていたと言ってたな 長田さんは不に怒った顔付きになり あいつめ全く気の聞かないやつ だと腹立しげに呟いた それほど奥さんがマリに会いたがっていた のならそう言ってよせば名古屋の病院 だろうがどこだろうが連れて行ったのに その客が初めて防災のことを話した時 から ずっと思っていたことだった

A・STEPアナウンスフォーラムは、ナレーターやアナウンサー、俳優、声優などが参加する声のプロフェッショナル集団です。このチャンネルでは、ハートウォーミング作品の名手・内海隆一郎さんの小説の読み聞かせをお届けします。
どうぞ、心温まる名作の数々をお楽しみ下さい!
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A・STEPアナウンスフォーラムは、2004年9月に初めて開催されたA・STEP朗読フォーラム「時の過ぎ行くままに」第1回公演で「うたごえ」を朗読して以来、毎回、内海作品を朗読してきました。
 2012年6月には鳩山会館において「内海隆一郎を読む~作者を囲んで~」を開催、内海先生にも対談にご出演頂きました。
 また、FM世田谷で朗読番組「モーニング・ライブラリー」をスタートするにあたり、内海先生から直接、放送に対する許諾を頂き、これまでに250作品以上を朗読してきました。
 この度、インターネットに作品を公開するにあたっては、著作権をお持ちの奥様、内海栄子様に、ご了承を頂いております。
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 大塚 富夫
 吉田 瑞穂

1 Comment

  1. 奧さんは本当に麻里ちゃんが愛しく思うったのでしょうねぇ。街でふとみかけた小さな子が本当に可愛く忘れられない、そんなことも歳を取ってくるとあるもんです。とても良い朗読を聴けました。

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